【名作揃い】叙述トリックを使ったおすすめ小説15選 秀逸な技術に騙される
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ミステリー小説が好きな人なら、叙述トリックという言葉を一度は耳にしたことがあるかもしれません。
ですが叙述トリックとは、具体的に何を意味するのでしょうか?
そこでこの記事ではまた、叙述トリックを取り入れた小説の特徴やその魅力を紹介。
あわせて秀逸な技術に騙されること間違いなしの名作小説の一例も紹介するので、ミステリー小説を探している人はぜひ参考にしてくださいね。
叙述トリックの小説とは
叙述トリックとは読者にミスリードを誘う、作者の意図的な策略や巧妙な手法のことを指します。
例えば叙述トリックの小説ではある出来事が後になって違った視点で解釈されることで、新たな真実が明らかになる場合があります。
叙述トリックにはまった時の衝撃は、一度体験すると癖になるという人も多いのではないでしょうか?
【アンケート調査】叙述トリックが秀逸だった作品は?
ブックスコレクション編集部は叙述トリックが好きな人にアンケートを実施。
叙述トリックが秀逸だった作品をうかがいました。
調査の結果、1位は『イニシエーション・ラブ』(乾くるみ著)と『十角館の殺人』(綾辻行人著)、3位には『葉桜の季節に君を想うということ』(歌野晶午著)となりました。
続いて、その作品が好きな理由や作品の魅力もアンケートを取りました。
得票数の多かったトップ3の作品について、回答の一部を抜粋して紹介します。
作品名 | 好きな理由や魅力 |
---|---|
『イニシエーション・ラブ』 | 「最後の1ページまで、本当に騙され続ける。読み終わった後に謎が生まれるので、すぐ2周目を読んだ」 |
「80年代の時代を上手く表現していたのと、同時にミステリアスな展開が多く頭の中を考えさせてくれる作品」 | |
「最後で全てがひっくり返ると宣言されてから読んでいるのにも関わらずまんまと驚かされてしまった」 | |
「適度なポップさもあり、印象に残った」 | |
『十角館の殺人』 | 「地の文を信じて読むので、作者に騙されたという感覚が強い」 |
「ミステリ初心者の自分でも読みやすくとてもハラハラしながら読むことができた」 | |
「初めて読んだミステリー小説で、叙述トリックにミスリードさせられた悔しさや心地よさが忘れられないから」 | |
『葉桜の季節に君を想うということ』 | 「いかに先入観を持って読んでいたのか思い知らされたから」 |
「過去と現在の物語が並行して語られていて、重層感や深みが感じられると思うから」 |
・調査対象:叙述トリック好きの78人
・調査期間:2023年8月
・調査方法:インターネットによる対象者へのアンケート
・調査機関:ブックスコレクション編集部
叙述トリックが秀逸なミステリー小説
巧妙な叙述トリックが織りなす、秀逸なミステリー小説の一例を紹介します。
アガサクリスティの作品なども登場するので、王道作品を探している人にもおすすめです。
十角館の殺人
アガサクリスティの名作『そして誰もいなくなった』をオマージュして書かれた本作。
舞台は半年前に殺人事件が起きた、孤島に建つ十角形の奇妙な館。
そこを訪れたのは大学ミステリ研の7人でしたが、彼らも連続殺人事件に襲われることに。
そして最後には衝撃の結末が待ち受けます。
華麗なトリックに騙されること間違いなしの、王道ミステリーですよ。
館での連続殺人の謎に迫る、鮮やかなトリックが織りなす緊迫のサスペンス
発売日 | 2007年10月16日 |
出版社 | 講談社 |
著者 | 綾辻行人 |
星降り山荘の殺人
雪に閉ざされた山荘で起こる連続密室殺人事件。
そこにはUFO研究家、スターウォッチャー、売れっ子女性作家など個性豊かな人々が集まっていました。
交通と通信が遮断された孤立した状況で推理が展開されますが、予想外の大どんでん返しに驚愕すること間違いなしです。
秀逸な叙述トリックによる騙しと、その快感に身悶えるミステリー小説です。
ミステリーお馴染みのクローズドサークルを舞台にした、名作ミステリー
発売日 | 2017年7月14日 |
出版社 | 講談社 |
著者 | 倉知淳 |
葉桜の季節に君を想うということ
元私立探偵・成瀬将虎は、霊感商法の調査依頼をされます。
そんな中、偶然にも自殺未遂を図ろうとする麻宮さくらを救い、2人の運命的な出会いを果たすことで物語は進んでいきます。
数々のミステリーの賞を総なめにしたこの名作は、巧妙に練り上げられた筋書きと狡猾な叙述トリックによって読者を魅了します。
一度読んだだけでは満足できず、何度も手に取りたくなる魅力たっぷりな小説です。
運命的な出会いと巧みに練り上げられた叙述トリックが魅力な名作
発売日 | 2007年5月10日 |
出版社 | 文藝春秋 |
著者 | 歌野晶午 |
ロートレック荘事件
美しい娘たちと青年が集まるロートレック荘で、展開されていく悲劇。
優雅なバカンスのはずが、警察の監視も虚しく美女たちが次々と殺されていきます。
読者を驚かす叙述トリックで、館の秘密と真犯人の正体に迫る本作。
読み進めていくうちに重なっていく小さな違和感が、最後には大どんでん返しとして迫ってくることでしょう。
『時をかかる少女』で知られる名作家、筒井康隆のミステリー小説
発売日 | 1995年1月30日 |
出版社 | 新潮社 |
著者 | 筒井康隆 |
この闇と光
『この闇と光』は幻想と現実の融合が美しいゴシックミステリー。
幸福に満ちた生活を送っていた盲目の王女レイアは、あることをきっかけにその全てを失っています。
その後、彼女が直面するのは驚愕の真実と混乱。
レイアが信じた世界の虚構が明らかになり、予測不能な衝撃の結末へ向かいます。
最後にはどんでん返しもあり、見どころ満載。
盲目の少女の信じた世界が崩れ去り、真実に迫る謎解きミステリー小説
発売日 | 2014年11月22日 |
出版社 | KADOKAWA |
著者 | 服部まゆみ |
マリオネットの罠
数々のミステリー作品を世に出してきた、赤川次郎の長篇ミステリー処女作。
「ガラスの人形」と例えられ、幽閉された美少女はある人物に救い出されますが、それと同時に世間では連続殺人事件が勃発。
この2つの出来事の間にある関係性とは?
息つく間もないテンポの良い展開が魅力で、最後の1ページまで緊張感を楽しめますよ。
赤川次郎を語るうえでは欠かせない、ミステリー愛好者必読の名作
発売日 | 2006年11月10日 |
出版社 | 文藝春秋 |
著者 | 赤川次郎 |
殺戮にいたる病
物語は猟奇的な殺人を繰り返す蒲生稔の逮捕から始まります。
犯人、元刑事、犯人の家族という3つの視点から事件の軌跡を辿っていきますが、最後には身も凍る衝撃の真実に行き着くのでした。
難解な叙述トリックで知られる本作は、ミステリー上級者でも読み応えを感じられること間違いなし。
グロいシーンが多いので、サイコホラーが好きな人にもおすすめです。
絶望と驚きが交錯するサスペンス小説、真実の愛の正体とは
発売日 | 1996年11月14日 |
出版社 | 講談社 |
著者 | 我孫子武丸 |
探偵映画
我孫子武丸によるメタ要素満載のミステリーです。
メタ要素とは例えば作品自体が自己言及したり、登場人物が自らが架空の存在だと自覚したりする手法。
ある映画の映画撮影中、結末を前にして監督が失踪します。
残されたスタッフたちは、監督が構想していたであろう結末を推理していくという一風変わったストーリー。
コメディタッチも多く、肩ひじ張らずに読めるミステリー小説ですよ。
二重の謎の叙述トリックに惑わされる、ミステリー小説
発売日 | 1994年7月7日 |
出版社 | 講談社 |
著者 | 我孫子武丸 |
イニシエーション・ラブ
バブル期の静岡で大学生の鈴木は歯科助手の彼女・マユと交際し、彼女に釣り合う男になろうと奮闘します。
一見純粋な恋愛小説のような甘酸っぱいストーリーと描写が続きます。
ですが随所に匂う叙述トリックに気づいた時、大きな衝撃を受けるはず。
大どんでん返しが好きな人や、恋愛小説が好きな人にもおすすめしたい小説です。
映画化で一気に話題になった、今までに無かった恋愛風ミステリー
発売日 | 2007年4月10日 |
出版社 | 文藝春秋 |
著者 | 乾くるみ |
アクロイド殺し
「ミステリーの女王」として名高い、アガサ・クリスティーの不朽の名作。
医師のシェパードは村の名士アクロイドから相談を持ちかけられ、アクロイドのもとに駆け付けます。
ですがすべてを語りつくす前に、アクロイドは殺害されてしまうのでした。
本作の秀逸な叙述トリックは後に社会的な論争を巻き起こすほど話題になりました。
ミステリー好きなら一度は読んでおきたい1作です。
名探偵ポアロシリーズの3作目にあたる、アガサ・クリスティーの名作ミステリー
発売日 | 2003年12月12日 |
出版社 | 早川書房 |
著者 | アガサ・クリスティー |
ハサミ男
ハサミ男と呼ばれるサイコキラーと、彼の模倣犯による連続殺人が描かれています。
第一の犯行と第二の犯行はハサミ男によるものでした。
模倣犯による第三の犯行に疑問を抱いた刑事磯部、サイコアナリスト堀之内が緊迫の捜査に挑みます。
また、模倣犯を突き止めるべく動き出すハサミ男。
驚きの連続と恐怖の展開が読者を引き込み、予測不可能な謎が明かされます。
連続殺人の謎が交錯するハサミ男と模倣犯の壮絶な対決
発売日 | 2002年8月9日 |
出版社 | 講談社 |
著者 | 殊能将之 |
模倣の殺意
新進作家・坂井正夫が、施錠された密室で青酸カリにより中毒死の状態で発見。
遺書はなく自殺とされましたが、動機も分からず状況には疑問が湧きます。
疑問を持った中田秋子が調査を開始し、予想外の真相が明らかになっていきます。
秀逸な叙述トリックに興奮すること間違いなしの、驚きとスリルを味わえるミステリー小説です。
密室の謎に隠された、叙述トリックに驚きの真相が鮮やかに絡み合う
発売日 | 2004年8月13日 |
出版社 | 東京創元社 |
著者 | 中町信 |
連続殺人鬼カエル男
連続殺人鬼『カエル男』による猟奇的な殺人事件が街を恐怖に包みます。
稚拙な犯行声明文や謎めいた動機が事件の謎を深め、警察の捜査は追いつかず、次々と続く殺人に街はパニックに。
カエル男の正体と目的を解明する緊迫した展開に引き込まれることでしょう。
サスペンスと猟奇性が絡み合ったミステリーが好きな人におすすめな作品です。
狂気と恐怖のカエル男による猟奇的な連続殺人に迫る物語
発売日 | 2011年2月4日 |
出版社 | 宝島社 |
著者 | 中山七里 |
仮面山荘殺人事件
8人の男女が集まる山荘に、逃亡中の銀行強盗が侵入。
男女は脱出を試みますが、そんな中ついに8人のうち1人が死体として見つかります。
しかし強盗が犯人ではなく、残された7人の中に犯人がいると考えられる状況に。
東野圭吾の手による王道のミステリーで、閉鎖空間が推理を盛り上げていきます。
登場人物の心理描写や叙述トリックが魅力で、時間を忘れて小説の世界に没入してしまうことでしょう。
銀行強盗の影に隠された殺人の真実とは、東野圭吾が贈る至高のミステリー
発売日 | 1995年3月7日 |
出版社 | 講談社 |
著者 | 東野圭吾 |
アリス・ミラー城殺人事件
密室殺人が繰り広げられる、アリス・ミラー城に集結した探偵たち。
ですが城に置かれたチェス盤の異変と共に、探偵たちもまた1人1人殺されていくのでした。
衝撃の結末には、アガサクリスティの名作『そして誰もいなくなった』に例えられるような衝撃を味わえるでしょう。
物語の中の大胆不敵な叙述トリックから目が離せません。
アリス・ミラー城を舞台にしたアガサクリスティ級の謎解きと衝撃の結末
発売日 | 2008年10月15日 |
出版社 | 講談社 |
著者 | 北山猛邦 |
そして誰もいなくなった
アガサ・クリスティの名作『そして誰もいなくなった』は古き良き時代のミステリー。
島に呼び集められた年齢も職業もバラバラな8人の男女は、素晴らしい晩餐を堪能します。
その後、彼らの過去の犯罪を暴く謎の声が…。
そして彼らは童謡の歌詞どおりに一人ずつ殺されていきます。
精神的に追い詰められていく緊張感や不安感の描写が秀逸で、ページをめくる手が止まりません。
密室ミステリーの傑作小説です。
孤島の屋敷を舞台に、段々と追い詰められる展開に引き込まれる
発売日 | 2010年11月10日 |
出版社 | 早川書房 |
著者 | 著 アガサ・クリスティー 訳 青木久惠 |
まとめ
叙述トリックとは作家の巧みな策略が絡み合い、読者を騙す巧妙な手法の集大成です。
予測不可能な展開や深みのあるキャラクターたちは、読者の心を引きつけること間違いなしです。
今回ミステリー作品の一例として紹介したものは、どれも叙述トリックの秀逸さが光る良作ばかり。
ぜひお気に入りの1冊を見つけて、叙述トリックの沼に存分に浸ってください。