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『おいしいごはんが食べられますように』を考察 お菓子を捨てた犯人も解説

sunny side-up egg on white ceramic plate beside stainless steel butter knife and fork
出典:Unsplash

※本ページにはプロモーションが含まれています

第167回芥川賞受賞作品である高瀬隼子による『おいしいごはんが食べられますように』。
この記事では、作品テーマやお菓子を捨てた犯人は誰かなど、物語に関する考察をしています。
記事の最後では『おいしいごはんが食べられますように』の文庫本についても解説しているので、文庫本の販売について知りたい人も要チェック。
なお記事には作品のネタバレが含まれているので、注意してください。

この記事は『おいしいごはんが食べられますように』のネタバレを含みます。
作品の結末に関するヒントを知りたくない人は注意してください。

目次

高瀬隼子作『おいしいごはんが食べられますように』概要

『おいしいごはんが食べられますように』は、第167回芥川賞受賞作品で、職場を舞台にした人間関係を描いた中編小説です。
仕事+食べもの+恋愛をテーマにした小説で、食品パッケージの制作会社を舞台に、二谷、芦川、押尾の3人を中心に物語が展開します。

『おいしいごはんが食べられますように』のあらすじ

頑張り屋の女性社員・押尾は、同僚の二谷に体調を崩しやすく常に配慮される立場の芦川への不満をこぼします。
二谷が同調すると、押尾は芦川に意地悪をしようと提案。
実は二谷は芦川と交際しているにもかかわらず、「おいしいごはん」を作る芦川を押しつけがましいと感じていました。
一方、芦川は早退するお詫びに職場に手作りスイーツを差し入れ続け…。
「食」や「当たり前」の価値観への疑問が散りばめられた話題の小説です。

『おいしいごはんが食べられますように』の登場人物

『おいしいごはんが食べられますように』の登場人物について解説します。
多面的で複雑な性格をもつ人物が多く、物語を面白くしています。

二谷

二谷は29歳の男性社員で、芦川と恋人関係。
おいしいごはんにほとんど興味がなく、食べ物がなくても生きていけるならそれが最高だとの考えの持ち主。
恋人である芦川が時間と手間をかけて料理を作ることが理解できず、手作りの食べ物を嫌っています。

芦川

芦川は30歳の女性社員で、仕事は得意とは言えないものの、料理は得意。
明るくほがらかな性格とちょっとした天然さから、男性からの人気が高いタイプ。
身体が弱く、体調不良の際は早退することが多い。
翌日謝罪の気持ちとして手の込んだ手作りのお菓子を職場に持参する。

押尾

28歳の女性社員で、気が強く、頑張り屋な性格。
押尾は、手の込んだお菓子を職場に持ってくる芦川に対して反感を抱いていて、その行為を理解し難く感じている。
社内では仕事において貢献しているが、彼女の努力や頑張りがあまり評価されていない状況。

40歳を過ぎた既婚者で、二谷や芦川の上司として登場。
会社には妻お手製の弁当を持ってくる。
藤は、よく早退する芦川に対して理解を示す。
ときどきセクハラと受け取れる行動もとる。

原田

パート社員の女性で、正義感が強く、ストレートな言葉遣いが特徴。
物事に対してははっきりとした意見を持ち、自分の考えを隠さずに表現。
原田は物語内でお菓子事件が発生した際、上司である藤に告げ口をする場面が描かれている。

【犯人は?】『おいしいごはんが食べられますように』の考察 (ネタバレあり)

『おいしいごはんが食べられますように』のお菓子を捨てた犯人は誰かなど、詳しい考察をしていきます。
ネタバレありの内容なので、ご注意ください。

なぜ二谷はおいしいごはんが嫌い?

二谷は「ごはんは感謝して食べましょう」などの、食に関する世間の価値観に反感をもつ人物。
おいしい手作り料理を食べた後にカップラーメンを食べるほどジャンクなものが好きです。
なぜ執着するのか、二谷の歩んできた進路に関係していると考察できます。
二谷は文学部への進学を考えていましたが、将来の安定を考え経済学部を選択し食品関係の仕事に就きました。
自分をごまかし続ける負の感情から、自分を大切にすることができず、手料理などの「よい」とされるものに強く反発しているのではないでしょうか。

強い二谷・押尾/弱くて守られる芦川

自分の仕事は責任を持って最後までやり遂げなければ気が済まないという押尾と対照的に、人に甘えて世渡り上手な部分がある芦川。
一人で何でも頑張る押尾は弱い立場の芦川にいら立つ一方、周囲の理解を得られずに孤立する虚しさが描かれます。
芦川は、会社で戦力としてカウントされませんが、したたかな一面もあり、二谷は彼女の弱い部分に惹かれて交際。
「強い/弱い」だけでは括れない「ままならなさ」を本書から感じるでしょう。

お菓子を捨てたもう一人の犯人は誰?

考察として、犯人はパートの原田説、芦川の自演説など複数の登場人物が捨てられたお菓子に関連して言及されています。
お菓子を捨てた犯人が特定の人物である必要性はなく、誰が犯人であるかについては読者の想像次第と言えるでしょう。
考察しながら謎解き要素も楽しめるのが、この作品の魅力の一つと言えるかもしれません。

食や同調圧力がテーマ?

おいしいものは共有したい、みんなでわいわい食べたい人は多いかもしれませんが、二谷と押尾は違います。
2人の考えとしては、おいしいものを共有するなんて息苦しいといった気持ち。
押尾は、おいしいと思っても自分がおいしいと思うだけで共有せずにいられる二谷との関係が居心地がいいと語っています。
このように、食や同調圧力に関する内容もテーマとなっています。

二谷と押尾と芦川の最後はどうなる?

二谷は芦川のお菓子を捨て、押尾は潰されたお菓子を芦川の机に置く意地悪をしていました。
ラストでは犯人とされた押尾は転職を決め、退職することに。
芦川は周囲からあたたかく見守られ続け、二谷は別の部署へ。
二谷は芦川と交際し続け、結婚も考えます。
なぜ疎ましく思う芦川と結婚するのかという疑問が湧きますが、考察できるのは愛情と憎しみは本質的に同じであるという考えです。
憎しみと愛情が混在した状況が、二谷の一種の自己肯定のように考えられるのではないでしょうか。

『おいしいごはんが食べられますように』の文庫はある?

『おいしいごはんが食べられますように』の文庫本についてですが、2023年9月の時点では文庫本が出版されている情報はありません。
現在は単行本のみ販売されています。
通常文庫化には2年~3年ほどかかるため、2022年3月に単行本が販売開始されたことを考えても、文庫化にはまだ時間がかかりそうです。

『おいしいごはんが食べられますように』を読もう

『おいしいごはんが食べられますように』は、単行本や電子書籍で読むことも可能です。
芥川賞を受賞し話題になった作品をぜひ読んでみてください。

おいしいごはんが食べられますように

食品パッケージ会社に勤め、そこそこうまくやっている二谷は、同僚女性の押尾からある提案をされます。
それは、体調を崩しがちでみんなが守りたくなる存在である芦川をいじめようという話でした。
実は芦川と交際している二谷ですが、その提案に乗り、芦川が差し入れる手作りお菓子を捨てるように。
人間関係と食を絡めながら展開していく、人間の多面性が描かれた芥川賞受賞作品。

この作品のおすすめポイント

「食」や「当たり前」とされる価値観に疑問を投げかける小説

発売日 2022年3月24日
出版社講談社
著者高瀬隼子
楽天で買う Amazonで買う1,300円 Kindleで読む1,463円 Yahoo!ショッピングで買う

まとめ

『おいしいごはんが食べられますように』の、お菓子を捨てた犯人は誰かなど犯人について考えられる考察や、文庫本に関する情報をまとめました。
この本は、人間の多面性や生きることのままならなさについて描かれています。
登場人物の気持ちなど考察しながら楽しめるのもこの作品の魅力の一つ。
ぜひ自分なりの考察を楽しみながら作品の世界観に浸ってみてください。

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