【後味の悪い最高傑作も】イヤミス小説おすすめ14選 イヤミス好きの心理も
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皆さんは、「イヤミス小説」というジャンルがあることをご存じでしょうか。
「イヤミスの三大女王」と呼ばれる作家も登場し、ファンを増やし続けている「イヤミス小説」。
今回は、そんな「イヤミス小説」について詳しく解説し、イヤミス好きの心理や後味の悪い小説のおすすめ作品を紹介します。
また、小説の選び方についても解説するので、まだ「イヤミス小説」に挑戦したことがないという人も、ぜひ参考にしてください。
イヤミスって何?
イヤミスとは、「読後、嫌な気分になるミステリ」の略称です。
読み終わった後にモヤモヤした気分になる、後味の悪い小説のことを指します。
事件を解決してすっきり終わるミステリ小説とは違い、殺人犯の恐ろしい心理描写や悲惨な結末を描き、読者に強烈な印象を残す作品です。
イヤミスの三大女王とは
「イヤミスの三大女王」と呼ばれている3人の女性作家をご存じでしょうか?
結末のどんでん返しが印象的な湊かなえ、人間の心の闇をリアルに描き出す真梨幸子、異様な雰囲気の物語が特徴の沼田まほかるがイヤミスの三大女王と呼ばれています。
イヤミス小説を読むなら見逃せない作家です。
イヤミス好きの心理とは?
イヤミス好きの心理は「人の不幸は蜜の味」という言葉に現れているのではないでしょうか。
というのもイヤミス好きの心理には、救いようのない悲劇に見舞われる登場人物を腹の内側で痛快に思う人間の一面が含まれているように思えるのです。
人は時として「自分はあの人よりもましだ」と、人と自分を比較して優越感に浸ることがあります。
そのような人間の本性こそがイヤミス好きの心理なのかもしれません。
イヤミス小説の選び方
イヤミス小説と一口に言っても沢山の作品があり、どの作品から挑戦すればいいのか分からない人も多いでしょう。
ここでは、後味の悪い小説の選び方について解説します。
短編か長編か
家事や仕事のちょっとした空き時間にイヤミス小説を楽しむなら、短編集がおすすめです。
また、イヤミス小説を読んだことがない人も、まずは短い時間で読み終わる短編から挑戦してみてはいかがでしょうか。
どっぷりとイヤミスの世界観に浸りたい人には長編小説にも挑戦してみましょう。
映像化されているか
イヤミス小説の中には映画化・ドラマ化されている作品も沢山あります。
映像と小説を比べながらそれぞれの良さを楽しみたい人には、映像化されている作品がおすすめ。
イヤミスの三大女王の湊かなえの作品も数多く映像化されているので、要チェックです。
作家で選ぶ
イヤミス小説を得意としている作家の作品は、読み応えがあって記憶に残ります。
イヤミスの三大女王である湊かなえ、真梨幸子、沼田まほかるの小説は特におすすめです。
その他にも桐野夏生や、男性作家なら乙一の小説でも、イヤミスの世界観が堪能できます。
文学賞の受賞作品から選ぶ
名のある文学賞を受賞している小説から選ぶのもおすすめです。
書店員が選ぶ「本屋大賞」や、本格ミステリ作家クラブが主催している「本格ミステリ大賞」など、さまざまな賞があります。
一定数の評価を得ている小説なら、個々の好みはありますが、作品としての質が高く安心して楽しめるでしょう。
【アンケート調査】おすすめのイヤミス小説は?
ブックスコレクション編集部がイヤミスが好きな97人にアンケートを実施。
1位は映画も話題になった『告白』(湊かなえ著)でした。
2位には『殺人鬼フジコの衝動』(真梨幸子著)、3位には『母性』(湊かなえ著)がランクインしています。
続いて、その作品が好きな理由や魅力もアンケートを取りました。
得票数の多かったトップ3のイヤミス小説について、回答の一部を抜粋して紹介します。
作品名 | 好きな理由や魅力 |
---|---|
『告白』 | 「衝撃的な告白から始まるミステリーものだけれども、とにかく最後まで後味が悪く性善説を信じられなくなる」 |
「人間の黒い感情や復讐心、エゴイズム、様々な感情を煮詰めたような作品。読了後もすっきりとせず、人間の本心を垣間見たような恐ろしい気持ちに」 | |
「湊かなえさんは伏線回収が素晴らしく、ストーリーはイヤミスですが、読者がすっきりとする形で終わります」 | |
「イヤミス未経験で興味がある人などにオススメ。ミステリーとしての要素も秀逸」 | |
「読者に命の重さについて訴えかける展開があるので、読む価値の大きい作品」 | |
『殺人鬼フジコの衝動』 | 「結局人は人無しでは生きていけないという内容で好きな人は絶対好きな作品」 |
「イヤミスにハマるきっかけになった作品」 | |
「誰も救われない鬱な展開が魅力的」 | |
『母性』 | 「母と娘の関係がリアルに描かれており、ぐさぐさと心に刺さる」 |
「登場人物のどの視点で見るかで話が変わってくるのが面白い」 |
・調査対象:イヤミス小説が好きな97人
・調査期間:2023年8月
・調査方法:インターネットによる対象者へのアンケート
・調査機関:ブックスコレクション編集部
どんでん返しがたまらない! イヤミス小説・後味の悪い小説14選
それではイヤミス好きの心理に刺さる、後味の悪い小説を紹介します。
湊かなえなど、イヤミス三大女王の最高傑作をはじめ、大どんでん返しや記憶に残るラストが印象的な作品を集めました。
ユリゴコロ
実家の押し入れで見つけた「ユリゴコロ」というタイトルの不思議なノート。
中には、生々しい殺人を犯した記憶が記されていたのでした。
このノートは一体誰が書いたものなのでしょうか?
読み進めていくうちに主人公は過去を思い出し、理解し、そして現実が大きく動き出します。
殺人鬼の理解し難い恐ろしい行動が描かれているのに、なぜか美しく、あたたかさを感じる物語。
映画化もされた沼田まほかるの最高傑作です。
殺人の記憶が美しくあたたかく描かれた、不思議な魅力を持つ後味の悪い小説
発売日 | 2014年1月9日 |
出版社 | 双葉社 |
著者 | 沼田 まほかる |
九月が永遠に続けば
主人公・佐知子の一人息子が、ある日突然失踪します。
息子の行方を必死に探す佐知子。
そんな彼女の周りで次々と不幸な出来事が連鎖していき…。
隠されていた人間関係や、人の心に潜む闇が段々と明らかになり、ラストは意外などんでん返しが待ち受けています。
追い詰められた人間の狂気的な心理状態を巧みな文章表現で描写しており、ぐっと引き込まれるイヤミス小説です。
人の心が持つ闇の恐ろしさを巧みな文章表現で描いた、背筋がぞっとする物語
発売日 | 2008年2月1日 |
出版社 | 新潮社 |
著者 | 沼田 まほかる |
母性
ある日、女子高生が自宅の県営住宅から転落し、中庭で倒れているところを発見されるという事件が起きます。
転落は事故なのか、それとも自殺なのか…。
事の発端は、11年前のある事件でした。
物語が進むにつれて、母と娘の歪な関係や、母が抱える心の問題が明らかになっていきます。
母になれば自然と備わるものだと認識されている「母性」の本質を深く問うた、イヤミスの三大女王・湊かなえの問題作です。
歪んだ母と娘の関係を描き、「母性」とは何かを深く考えさせられる衝撃作
発売日 | 2015年7月1日 |
出版社 | 新潮社 |
著者 | 湊 かなえ |
告白
娘を亡くした女性教師の「愛美はこのクラスの生徒に殺された」という衝撃の告白からはじまる物語。
ストーリーが進むにつれて事件の全容が明らかになっていきます。
「級友」や「犯人」など、語り手が逐一変化するのもこの小説の見どころ。
切り離された断片がパズルのようにつながっていき、最後には大どんでん返しがあります。
湊かなえがミステリ作家としての実力を知らしめた、イヤミス小説の傑作です。
娘を亡くした女教師の告白から物語が動き出す湊かなえの最高傑作
発売日 | 2010年4月8日 |
出版社 | 双葉社 |
著者 | 湊 かなえ |
孤虫症
週に3回、夫とは別の男と肉体関係を持っている主婦の麻美。
彼女の不倫相手が次々と変死する事件が起き、やがて彼女自身の肉体にも異変が起こります。
性感染症の恐怖に追い詰められた麻美の心は、ゆっくりと狂気に蝕まれていくのでした。
女性同士の醜い嫉妬が生々しく描かれているのも魅力の1つ。
後味の悪さに加えてグロテスクな描写も楽しみたい人におすすめの小説です。
後味の悪い結末とグロテスクな描写が魅力の濃密なイヤミス小説
発売日 | 2008年10月15日 |
出版社 | 講談社 |
著者 | 真梨 幸子 |
殺人鬼フジコの衝動
衝動的に人を殺してしまう殺人鬼のフジコ。
彼女は、一家惨殺事件でただ1人生き残ったという辛い過去を抱えていました。
彼女が伝説の殺人鬼となってしまったのは一体なぜなのでしょうか。
最後の最後で衝撃の真実が明かされ、もう一度読みたくなること間違いなしの異色のミステリ小説。
口コミが広がり50万部突破のベストセラーとなった、真梨幸子の最高傑作です。
最後の最後で震えるほどの衝撃が待ち受ける、巧みに仕組まれたイヤミス小説
発売日 | 2011年5月7日 |
出版社 | 徳間書店 |
著者 | 真梨 幸子 |
イヤミス短篇集
真梨幸子の6篇の短編が楽しめる短編集。
短編ですが、どの作品でも人間の心の歪んだ部分が生々しく描かれており、イヤミス小説ならではの後味の悪い読後感が味わえます。
1冊で雰囲気の異なる6つの物語を堪能できるお得さと、スキマ時間でも楽しめる手軽さが魅力。
忙しくてまとまった読書時間が取れない人や、イヤミス小説初心者におすすめの作品です。
後味の悪い6つの物語が楽しめる、真梨幸子初の短編集
発売日 | 2016年11月15日 |
出版社 | 講談社 |
著者 | 真梨 幸子 |
ボトルネック
恋人を亡くした高校生の嵯峨野リョウ。
彼は恋人を追悼するために訪れた東尋坊で、崖から転落してしまいます。
その後リョウが目を覚ました世界は、現実と似ているけどどこか違っている不思議な世界。
リョウはその世界で過ごす中である事実に気付き、打ちのめされていくのでした。
元の世界に戻ったリョウが選ぶのは生なのか死なのか…。
人間の闇を痛々しく描いた心えぐられる作品です。
結末の解釈が読者に委ねられた、心に重くのしかかるSFミステリ作品
発売日 | 2009年10月1日 |
出版社 | 新潮社 |
著者 | 米澤 穂信 |
代償
過酷な運命を辿った少年が成長して弁護士となり、悪と対峙するまでを描いた物語。
主人公・圭輔の過酷な少年時代と、遠縁の親戚・達也との関りを第一部で描き、第二部では弁護士になってからの圭輔を描きます。
弁護士として働く圭輔のもとに、強盗殺人で逮捕されていた達也から舞い込んだ依頼。
実はこの依頼は、達也が圭輔に対して仕組んだ罠でした。
弁護士という立場から悪をどう裁くのか、最後まで目が離せない作品です。
悪人を救うという立場から裁こうとする弁護士を描いたリーガルミステリ
発売日 | 2016年5月25日 |
出版社 | KADOKAWA |
著者 | 伊岡 瞬 |
さんくすないと
デパートで年に1度開かれる「サンクスナイト」。
抽選で選ばれた女性たちが、デパ地下食品を無料で好きなだけ食べられるという深夜のイベントです。
しかし、ショーケースの中に噴射されていた毒により、「サンクスナイト」は恐怖のイベントに様変わり。
次々と倒れていく参加者たち。
死から逃れるただ1つの方法は、ある食べ物の中に含まれた解毒剤を摂取することでした。
極限状態に追い詰められた人間の狂気的な姿が描かれた作品です。
極限状態での人間の本性が描かれた、グロさも楽しめるミステリ小説
発売日 | 2012年4月 |
出版社 | 枻出版社 |
著者 | 根本 起男 |
愚行録
エリートサラリーマンの夫に美しい妻、可愛らしい子どもという理想の家族だった田向一家が惨殺され、犯人が捕まらないまま時が流れます。
どうして田向一家は殺されなければいけなかったのでしょうか?
その謎が、関係者へのインタビューを通して徐々に明らかになっていきます。
事件の裏側には様々な人間の「愚行」が潜んでいて…。
読者の予想を何度も裏切る、巧みに仕組まれたストーリー展開が魅力のイヤミス小説です。
予想を裏切る展開に3度の衝撃が走る、ミステリ作家・貫井徳郎の最高傑作
発売日 | 2009年4月17日 |
出版社 | 東京創元社 |
著者 | 貫井 徳郎 |
鬼畜の家
夫を殺し、娘を殺し、息子とともに死んだ鬼畜な母親。
その母親の常軌を逸した行動が、唯一生き残った末娘の告白により明らかになっていきます。
保険金を目当てに次々と殺人を行っていく母親の狂態が、強烈なインパクトとともに描かれた作品。
最後に用意されたどんでん返しは衝撃的で、1度読むと忘れられないイヤミス小説です。
母親の鬼畜さを余すことなく描いた記憶に残るイヤミス小説の傑作
発売日 | 2014年4月15日 |
出版社 | 講談社 |
著者 | 深木 章子 |
グロテスク
同じ高校に通っていた4人の女性が転落していく姿を描いた小説。
並外れた美しさを持つ妹のユリコに劣等感を感じている「わたし」の視点で物語は語られていきます。
途中から語り手の「わたし」が真実を語っているのかどうかも分からなくなり、読者は不思議な感覚に陥るでしょう。
現実に起きた事件を元にして生み出された、桐野夏生の最高傑作。
何が真実か分からなくなる、不思議な魅力を持ったイヤミス小説
発売日 | 2019年11月15日 |
出版社 | 文藝春秋 |
著者 | 桐野 夏生 |
GOTH 夜の章
作家・乙一の連作短編小説集のうち、夜に関わる3つの作品が収録されているのが『GOTH 夜の章』。
「GOTH」とは、人間の残酷な面を覗きたがる者のこと。
「夜の章」は上巻にあたり、下巻である「僕の章」も合わせて読むことをおすすめします。
描かれているグロさと人間の恐ろしさに背筋が凍る、1度ハマるとやみつきになってしまうシリーズ。
短編なので読みやすく、イヤミス小説初心者にもおすすめできる作品です。
短編の中にも恐ろしさとグロさがしっかりと詰め込まれた作家・乙一の傑作
発売日 | 2005年06月25日 |
出版社 | KADOKAWA |
著者 | 乙 一 |
まとめ
イヤミス小説について詳しく解説し、イヤミス好きの心理や後味の悪い小説を紹介しました。
紹介した作品は強烈なインパクトやどんでん返しががあるものばかりで、イヤミス小説らしさを存分に堪能することができます。
読めばあなたも後味の悪い小説の魅力にハマってしまうでしょう。
衝撃的すぎる作品を読むのは抵抗があるという人は、まずは気軽に挑戦できる短編集から試してみてはいかがでしょうか。