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『聖なる鹿殺し』を徹底考察! マーティンの力やどうやって力を使ったのかをネタバレ解説

a deer standing on top of a lush green field
出典:Unsplash

※本ページにはプロモーションが含まれています

ギリシャ映画界、注目の監督ヨルゴス・ランティモスが手掛けたホラー映画『聖なる鹿殺し』。
映画を観た人の中には、どうやって予言を実現させたのかなど気になっている人も多いでしょう。
この記事では『聖なる鹿殺し』のあらすじを解説し、マーティンの力の正体や心臓のシーンの意味などネタバレ考察します。
考察を知るとさらに『聖なる鹿殺し』の怖さを感じられるはずなので、視聴済みの人はぜひ読んでみてください。

この記事は『聖なる鹿殺し』のネタバレを含みます。
作品の結末に関するヒントを知りたくない人は注意してください。

目次

【ネタバレ注意】『聖なる鹿殺し』のあらすじ解説

ネタバレ込みで、『聖なる鹿殺し』のあらすじを解説します。
あらすじを読んで、作品の流れを整理しておきましょう。

謎の青年、マーティンとの密会

心臓外科医のスティーブンは、妻と二人の子どもを抱える父親。
そんなスティーブンには、一つだけ家族に隠している秘密があります。
それは16歳の少年、マーティンと密会していること。
ネタバレになりますが、マーティンの父親はかつてスティーブンが執刀し死なせてしまった患者。
しかし今では二人は食事をしたり、プレゼントをしたりし合うほど仲の良い関係です。

マーティンの急変

スティーブンはマーティンの存在を長年家族に伝えられずにいましたが、意を決してマーティンを家族に紹介することに。
そのお礼として、今度はマーティンが自分の家にスティーブンを招きます。
翌朝スティーブンがクリニックに出勤すると、胸が痛いと訴えるマーティンの姿がありました。
しかし検査しても何の異常も見つかりません。
それを機にマーティンの様子は急変し、しつこくスティーブンに付きまとうように。

マーティンの予言

急変したマーティンはスティーブンに恐ろしい予言を伝えます。
それはスティーブンが家族の誰か一人を殺さなければ、スティーブン以外の家族が全員死ぬというもの。
死に至るまでには、1.手足のまひ、2.食欲がなくなる、3.目から出血し死亡する、の段階があると予言しました。
スティーブンは最初こそ予言を真に受けませんでしたが、予言の通り家族の体調に異変が現れるようになると信じざるを得なくなっていきます。

スティーブンは、生贄を選ぶことに…

マーティンの予言を信じたスティーブンは、家族三人を拘束し、誰か一人を殺すことに決めます。
しかし誰を殺すか自分の意志では選ぶことができず、ロシアンルーレットのような形で、銃を撃っていくことに。
ネタバレですが、最終的に銃弾はボブに命中し死亡します。
ボブが死ぬとキムの難病は治り、スティーブンには幸せとは言えない日常が戻りました。

タイトルの意味、元ネタはギリシャ神話

『聖なる鹿殺し』のタイトル名は、古代ギリシャ神話『アウリスのイフィゲニア』に由来しています。
この神話では、ギリシャ軍の指導者が誤って女神の聖なる鹿を殺してしまいます。
その代償として、女神はギリシャ軍指導者に対して「ギリシャ軍か娘のどちらを生贄に捧げろ」と要求。
アガメムノンは悩みに悩んだ末、娘を生贄に捧げることに決めます。
このようなギリシャ神話をベースに、『聖なる鹿殺し』は制作されていました。

マーティンはどうやって力を使ったのか? 謎を解く二つの手掛かり

マーティンの予言通り、スティーブンの子供達は原因不明の病魔に襲われました。
予言はマーティンの力によるものなのか、どうやって実現したのか、知るうえでカギとなる手掛かりをネタバレありで解説します。

その1. ボブに付きまとう見えない視線

ボブが病院のエスカレーターを降りようとすると、足に麻痺が起こるシーン。
このシーンは、ボブの真上のかなり高い位置から撮影されていました。
あえてこのようなアングルから撮影したのは、遠くからボブに付きまとう第三者の存在を仄めかすためだったと考察できます。
高い位置というのがポイントで、第三者はボブの上にいる存在、つまり超越的な存在だった可能性が高いです。

その2. マーティンの不自然な言動

マーティンは予言をした張本人でありながら、彼の言動は不思議と受動的です。
例えばボブに不調が現れた時、マーティンが言った「今に最悪の瞬間がくる。ついに始まったんだ」という発言。
予言がマーティンの力によるものなら、「始まる」ではなく「始める」と言うのが自然です。
他にも、「先生には同情している」と言うセリフがありましたが、「同情」という言葉は本来、自分の力が及ばないことに対して使うのではないでしょうか。

【結論】マーティンの力は、超越的なものだった可能性が高い

マーティンがどうやって力を使ったというより、そもそも予言の実行は超越的な存在によるものだったと考察できます。
マーティンが予言に対してどこか受け身だったのも、予言がマーティンの力によるものではないとすれば説明が付きます。
別にスティーブンに復讐を仕掛ける人物がいるとしたら、マーティンの母親が関係していた可能性も。
しかしどうやって予言が具現化されたか、作中では最後まで触れられませんでした。

【ネタバレ注意】『聖なる鹿殺し』の謎描写を考察

予言がどうやって行われたか以外にも、作品中には疑問が残る登場人物の言動や、描写が様々ありました。
ネタバレ込みで、『聖なる鹿殺し』の謎描写を解説します。

心臓で始まり心臓で終わるプロットの意味

作品の冒頭は鼓動する心臓がズームインする映像で始まります。
一方、ラストはボブの心臓部へのズームアウトで終わりました。
このような演出は、『聖なる鹿殺し』が命の物語であることを印象付けています。
心臓は命の源であり、人間は心臓なしでは生きていけません。
心臓を治す仕事をしているスティーブンが我が子の心臓を止めなければならなかったというのはとても辛いことだったでしょう。

スティーブンはなぜマーティンと密会していたのか?

スティーブンがマーティンと密会していたのは、マーティンの裏に周りに知られたくないことがあったからです。
スティーブンはマーティンの父の手術前、飲酒していましたが、その事実を隠蔽していました。
その一方で、マーティンの父を救えなかったことへの罪悪感から、スティーブンはマーティンを気に掛けていました。
そういった事情を家族や職場の人に詮索されないよう、マーティンと密会していたのでしょう。

マーティンが画面左で見切れていた理由

マーティンがスティーブンに、「家に来て欲しい」というシーン。
マーティンが不自然なほど左に見切れていました。
さらにマーティンがスティーブンに圧を掛けるほど、マーティンは左に、スティーブンは右に追い込まれていきます。
映像や舞台の世界では、悪役を左に配置するのがお決まりです。
このシーンも、マーティンを悪役として際立たせるための演出だったと考察できます。

『聖なる鹿殺し』はなぜ怖いのか?

『聖なる鹿殺し』は過激な演出は少ない落ち着いた作風の映画にも関わらず、尾を引くようなねっとりとした恐怖があります。
ここでは本作の怖さの理由に迫っていきます。

巧みなカメラワーク

『聖なる鹿殺し』が怖い理由の一つは、巧みなカメラワークにあります。
例えばマーティンが左に見切れていた描写は、その意図が分からないで見ているとただただ気持ち悪いです。
また本作ではカメラワークを通して見えない第三者の視点が描かれていましたが、その正体が全く分からないまま展開が進むといった、漠然とした恐怖感がありました。

幽霊が出ない怖さ

一般的なホラー映画では幽霊や悪魔、サイコパスなど恐怖の対象がはっきりとしていることが多いです。
しかし本作では、結局誰がどうやって予言を具現化したのか最後まで明かされませんでした。
唯一の大きな手掛かりといえるのは、超越的なものの存在が仄めかす鳥瞰的なカメラワークぐらい。
あえて幽霊を出さず見る人に想像の余地を持たせているのが、『聖なる鹿殺し』の怖さの理由です。

家族を生贄に選ばないといけないという極限の状況

『聖なる鹿殺し』では目に目えない存在への恐怖とは別に、家族を生贄に選ぶという現実的な怖さも描かれていました。
愛する人を殺すことは、自害する以上に辛いことなのではないでしょうか。
スティーブンは結局自分の意志では生贄を選ぶことができず、ロシアンルーレットのような方法でボブを殺し、責任逃れしました。
スティーブンの状況を自分に置き換えて考えた時、どうやって生贄を選ぶのか想像すると非常に怖いです。

『聖なる鹿殺し』を見る

以上のあらすじ、解説を踏まえ、もう一度『聖なる鹿殺し』を視聴してみてください。
考察を知る前と後とでは、恐怖の感じ方が違うはずです。

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア

ダークな作風を特徴とする、ギリシャ出身の監督、ヨルゴス・ランティモスが手掛けたホラー映画です。
心臓外科医のスティーブンが、彼は謎の少年マーティンから恐ろしい予言を受け、極限の状況に迫られるといったあらすじ。
ギリシャ神話をベースにしていて、邦画やハリウッドホラーとはまた違う、独特な世界観を楽しめます。

この作品のおすすめポイント

ヒトコワ系、ゴースト系などの枠にはまりきらない、新感覚のホラー映画

公開日2018年3月3日
監督ヨルゴス・ランティモス
出演コリン・ファレル, ニコール・キッドマン, バリー・コーガン
楽天で買う Amazon Prime Videoで観る330円 Amazonで買う4,085円 Yahoo!ショッピングで買う

まとめ

今回は映画『聖なる鹿殺し』のあらすじ解説、ネタバレ考察を行いました。
本作では、どうやってマーティンの力が使われたのか明確には描かれていませんでした。
しかしカメラワークやマーティンの言動から紐解くと、力の正体は超越的なものだった可能性があります。
解説を踏まえて、ぜひもう一度『聖なる鹿殺し』を視聴してみてください。

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