【何が言いたい?】『ノルウェイの森』を考察 あらすじや映画キャスト、名言も解説
数ある村上春樹の小説の中でも、最大の発行部数を誇る『ノルウェイの森』。
読みやすい文体ながらも、何度も読み返したくなるような深みのあるストーリーは世代や国を超えて多くの人を惹きつけてきました。
今回は『ノルウェイの森』の考察が気になっている人に向けて、作品テーマや最後のセリフ、作者は何が言いたいのかといったことを掘り下げます。
あらすじや登場人物、名言についても紹介するので、これから読んでみたい人も必見です。
この記事は『ノルウェイの森』のネタバレを含みます。
作品の結末に関するヒントを知りたくない人は注意してください。
村上春樹著『ノルウェイの森』について
村上春樹の小説『ノルウェイの森』は、1987年の刊行以来、累計発行部数が1000万部を超えを誇るヒット作品です。
作者の独特な文体と登場人物の魅力が多くの読者に共感を呼び、国内外で高い評価を受けています。
また2010年には映画化もされ、作品の知名度を一層高めました。
映画のキャッチコピーは「深く愛すること。強く生きること。」で、物語のテーマを象徴しています。
『ノルウェイの森』のあらすじ
高校時代、親友のキズキを自殺で失ったワタナベは東京で一人の大学生として過ごしていました。
そんなある日ワタナベはキズキの元恋人である直子と偶然再会し、2人は再び心を通わせるようになります。
しかし直子は心の闇に苦しみ、彼女の精神状態はますます悪化。
ワタナベの人間関係は揺れ動き、彼らの運命は深く絡み合っていきます。
一言でいえば、『ノルウェイの森』は淡く美しい愛と苦悩が交錯するといった物語です。
『ノルウェイの森』の登場人物と映画版キャスト
『ノルウェイの森』の主要な登場人物と、カッコ内で映画版のキャストを解説します。
登場人物像を詳しく解説しているので、あらすじとあわせて参考にしてください。
ワタナベ (松山ケンイチ)
作品の主人公。
神戸の高校を卒業後、東京の私立大学に進学し演劇科に在籍。
寮生活を送りながら、直子や緑との関係に翻弄されます。
寂しさを埋めるために複数の女性と性関係を持つ一方、自己の存在や愛について探求し続けます。
直子 (菊地凛子)
直子は作品のヒロイン的存在。
キズキの彼女で、幼馴染でもあります。
キズキの自殺後、精神的に病んでいきます。
ワタナベとの関係を持ちますが、病気が悪化し治療施設に入寮。
複雑な感情や内面の葛藤を抱えながらも、彼女自身のアイデンティティを模索し続けます。
キズキ (高良健吾)
ワタナベの親友。
直子にとっては、キズキは幼馴染であり彼氏でもありました。
キズキは明るく才能豊かで周囲からも慕われる存在でしたが、ある事件をきっかけに自殺します。
彼の死が物語の転機となり、周囲の人々の心に深い影響を与えます。
緑 (水原希子)
緑はワタナベと同じ大学の同級生で、物語の進展を促す重要なキャラクターです。
緑は坊主頭でにしたり頭の固い恋人を持ってみたりと、ユニークな一面を持ちます。
ワタナベとの交流を通じて緑は心に変化をもたらし、新たな関係が築かれます。
レイコ (霧島れいか)
レイコは直子の療養している寮のルームメイト。
ピアノの才能を持ち、寮の仲間たちに音楽を教えています。
複数回の入退院を経験し、寮での生活を長く続けています。
レイコは物語の中で重要なサポート役として登場し、ワタナベや直子に影響を与える登場人物です。
永沢 (玉山鉄二)
永沢は東京大学の法学部に在籍する、容姿端麗な学生です。
彼は死後30年経っていない作家の作品を読まないなど個性的な一面を持っていて、自分独自のセンスや価値観を大切にしています。
女性問題を抱えつつもワタナベや他の登場人物との関わりを通じて、物語に深みと興味深さを加えています。
ハツミ (初音映莉子)
ハツミは永沢の彼女であり、裕福な家庭の出身。
永沢が他の女性と性的な関係を持つことを黙認しますが、後に別れ他の男性と結婚します。
ハツミの存在は愛や人間関係の脆さを浮き彫りにし、小説に悲劇的な要素をもたらしています。
【考察解説】『ノルウェイの森』は何が言いたい?
『ノルウェイの森』の考察と解説をまとめました。
作者は何が言いたいかや、最後のセリフについても考察・解説しています。
【考察解説】『ノルウェイの森』はビートルズの曲?
作品中では、ビートルズの曲『Norwegian Wood(ノルウェイの森)』が登場します。
これはワタナベが直子のいる療養所を訪れた際、直子のリクエストでレイコがピアノで演奏した曲。
この曲は小説の中で重要なモチーフとなっていて、ワタナベと直子の関係の象徴として使用されています。
【考察解説】描かれる生と死と性
小説では登場人物たちが自己のアイデンティティや欲望と向き合いながら、生と死と性について考える場面が多く描かれています。
ワタナベは友人の死や自身の孤独といったテーマに直面し、生きる意味や死の不可避性について深く考えるように。
また登場人物たちの間には、生と死をめぐるさまざまな関係が展開されます。
性についても、小説の中での重要なテーマです。
登場人物たちは若さと欲望の中で性的な経験を追求し、自己の性的アイデンティティを模索する様子も描かれます。
【考察解説】なぜ直子は自殺した?
直子の自殺は、直子の中で2つの自己が対立したことに一因があるとされます。
直子は自身の内に「正しくない」狡猾な自己と「正しく」あろうとする自己が存在し、それによって心が引き裂かれていました。
小説内で強調されるのは、「死は生の対局としてではなく、その一部として存在している」という考え方です。
直子はキズキとの関係で「半分死んだ世界」で生きるつもりでした。
一方で、主人公との交流によって「現実世界」に引き上げられることに魅力を感じました。
この対立する2つの自己と「死は生の一部として存在する」という考え方が、彼女の心に葛藤を生じさせ、自殺へと至ったと考察できます。
【考察解説】作者は何が言いたい?
作者の村上春樹が何が言いたいかというと、喪失や苦悩の中でどう生きていくかということだと考察できます。
『ノルウェイの森』は、生と死と性、現実と空想などの対立概念を明確に分けず、それらが複雑に絡み合って存在することを示しています。
これは、現代社会が正しいか間違いかの二分割に囚われすぎている中で、生きづらさを感じる人々への作者からのメッセージとも言えます。
【考察解説】最後のセリフの意味は?
最後のセリフは、物語の主人公であるワタナベが一時的な逃避や迷いから現実に立ち返ったことを表現していると解釈できます。
直子は物語中で「死の象徴」、一方で緑は「生の象徴」として描かれています。
ワタナベの最後のセリフには確かな答えはありません。
これは生きること自体が不確かさに立ち向かうことであるという、作者・村上春樹のメッセージだと考察できます。
「あなた、今どこにいるの?」と彼女は静かな声で言った。
僕は今どこにいるのだ? 僕は受話器 を持ったまま顔を上げ、電話ボックスのまわりをぐるりと見まわしてみた。
僕は今どこにいるのだ? でもそこがどこか僕にはわからなかった。
(略)僕はどこでもない場所のまん中から緑を呼び続けていた。
『ノルウェイの森』名言
『ノルウェイの森』には数々の名言が残されていますが、その中から厳選したものをいくつか紹介します。
「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している」
この名言は、小説の中で重要なテーマとして描かれています。
死は一般的には生の対極としてとらえられることが多いですが、名言から分かるように『ノルウェイの森』では異なる視点が提示されています。
この名言は、読者に対して死と生の関係性を考えさせ、人生の哲学や存在意義について深く考えさせるきっかけとなります。
あなたがもし直子の死に対して何か痛みのようなものを感じるのなら、あなたはその痛みを残りの人生を通してずっと感じ続けなさい。
そしてもし学べるものがあるのなら、そこから何かを学びなさい。
でもそれとは別に緑さんと二人で幸せになりなさい。
(略)だから辛いだろうけど強くなりなさい。
もっと成長して大人になりなさい。
レイコは直子の死によって、ワタナベが感じる痛みや苦しみへの共感を表しています。
それでもワタナベに希望を持って生きるように促しています。
このフレーズからレイコは直子の死にふさがった、ワタナベを生の世界にとどまらせる「生の象徴」として描かれていたと読み取れます。
学びながら成長していくことが大事という人間の真理をついた、レイコの名言となっています。
「自分がやりたいことをやるのではなく、やるべきことをやるのが紳士だ」
「死んだ人はずっと死んだままだけど、私たちはこれからも生きていかなきゃならないんだもの」
「私たちは(私たちというのは正常な人と正常ならざる人をひっくるめた総称です)不完全な世界に住んでいる不完全な人間なのです。定規で長さを測ったり分度器で角度を測ったりして銀行預金みたいにコチコチと生きているわけではないのです。」
『ノルウェイの森』を楽しむ
ここでは『ノルウェイの森』の小説と映画作品を紹介します。
小説を見たことがあるという人は、ぜひ映画も視聴してみてください。
ノルウェイの森 上
発売日 | 2004年09月14日 |
出版社 | 講談社 |
著者 | 村上春樹 |
ノルウェイの森 (映画)
公開日 | 2010年12月11日 |
監督 | トラン・アン・ユン |
出演 | 松山ケンイチ、菊地凛子、水原希子 |
まとめ
『ノルウェイの森』のあらすじやキャストの紹介、最後のセリフなどの考察を行いました。
特に作品の核を詳しく解説したので、作者は何が言いたいのかわからなかった人も『ノルウェイの森』に対する理解が深まったかと思います。
この考察を頭に入れたうえで、ぜひもう一度『ノルウェイの森』を読み直してみてください。
きっとこの記事も捉え切れていない、新たな発見があるはずです。
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