純文学とは? 現代の名作純文学12選 初心者も読みやすい美しい文章の文豪小説も
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純文学とは、わかりやすいストーリーを楽しむだけでなく、人生に関わる深いテーマや哲学的考察など、複雑な内容の作品が多いのが特徴。
この記事では純文学の意味や大衆文学との違い、現代、近代のおすすめの純文学小説、作家一覧を紹介します。
純文学について詳しくない人も、紹介した作品を読むことで純文学とはどういった作品なのか分かるはず。
中学生、高校生にも読みやすい面白い小説や作家一覧やランキングを取り上げているのでぜひ参考にしてください。
純文学とは 大衆文学との違い、英語で何て言う?
純文学と大衆文学の意味の境界は曖昧ですが、分けて考えると以下のようになります。
大衆文学は読者が楽しむことを目的としているので、比較的読みやすく面白い作品が多く、はっきりした起承転結の構成が重視されています。
一方純文学は大衆文学よりも芸術的価値を追求し、文学性が重視される傾向が強いです。
純文学には登場人物の感情や情景が豊かに描かれていることが多いので、大衆文学と比べじっくり味わえるでしょう。
また純文学は英語では何と言うのでしょうか。
純文学を英語で直訳するとpure literatureとなりますが、実際に英語圏ではそのような表現はしないようです。
日本で言う純文学と近い意味合いとして、英語ではthe classicsやclassic literature、the great booksという英語表現があります。
しかし純文学とまったく同義の英語は無く、純文学は日本特有の小説ジャンルの1つとも言えます。
純文学の有名作家一覧 芥川賞受賞作も
日本の代表的な純文学作家一覧として、夏目漱石、芥川龍之介、泉鏡花、村上春樹、川上未映子、小川洋子らが挙げられます。
夏目漱石は『こころ』、泉鏡花は『高野聖』、村上春樹は『風の歌を聴け』、川上未映子は『ヘヴン』、小川洋子は『博士の愛した数式』が代表作です。
また、毎年話題になる芥川賞は主に優れた純文学に与えられる賞なので、芥川賞受賞作を読んでみるのもよいでしょう。
初心者でも面白い? 純文学の日本文学の魅力とは
純文学の魅力は美しい文章と人の心の分からなさに触れられることではないでしょうか。
ここでは大衆文学とは一味違う、純文学の魅力を丁寧に解説します。
美しい文章
純文学の醍醐味は、美しい文章や洗練された文体にあります。
純文学は時間をかけて丁寧に読み込むほどに、作品に秘められた美しい描写のかけらをたくさん見つけられるでしょう。
また洗練された文体で構成された美しい文章は読みやすいと同時に、心地よいリズムをも刻むもの。
静かに熟読するもよし、ゆっくりと音読しながら美しい文章の余韻に浸るもよし、様々な読み方を楽しめるのが純文学の魅力です。
人の心を奥深くまで覗くことができる
純文学のもう1つの魅力は人の心の深淵を覗くことができること。
純文学では、愛や理屈といったきれいごとだけではない人間の心の本質が描かれています。
勧善懲悪の小説がある一方で、殺人や不倫など倫理的に悪とされる行為に手を染める人間の心理を丁寧に描いた作品もあります。
小説を通して人の心を知ることは、現実を生きる自己や他者への理解も深めます。
そうすれば、世界の見え方は少し違ってくるかもしれません。
中学生、高校生に純文学がおすすめの理由
純文学が中学生や高校生におすすめな理由は、純文学を読むことで受験や文章能力の向上に役立つ可能性があるからです。
現代文の授業が楽しくなったり、国語の読み取り力も上がったりするしれません。
純文学で様々な価値観に触れることで、柔軟な考え方を持ちやすくなることが期待できます。
こうした理由で、中学生、高校生でも純文学の日本文学にチャレンジしてみるのがおすすめです。
【100人にアンケート調査】おすすめの純文学ランキング
ブックスコレクションでは、読書好き100人に、好きな純文学作品についてアンケート調査を実施。
お気に入りの作品について回答してもらいました。
1位は『人間失格』、2位は『こころ』、3位は『銀河鉄道の夜』という結果に。
教科書にも掲載されたことがあるるような名作もランクインしています。
続けて、その作品が好きな理由についてもアンケート調査を行いました。
以下1位から3位までの回答を抜粋しています。
作品名 | 好きな理由 |
---|---|
1位『人間失格』 | 「情けないことでもそれが人の心理の真実だと分かる点で教養があるから」 |
「初めて読んだ時衝撃を受けたから。読むたびに印象が変わる作品だと言われていて、何回か読んだけれどその通りだから。」 | |
「自分の中にある人間の弱さを想起させてくれる主人公に、どんどんハマっていく面白さがあります。」 | |
「夢や希望を追い求めるものの、現実との隔たりに苦しみ、自己を否定する様子が今の自分と重なっているため。」 | |
2位『こころ』 | 「起承転結が素晴らしくて、最後のどんでん返しで涙が流れるから。」 |
「作者がこの時何を考えながら書かれていたのか、それを常に想像しながら読む魅力を魅せてくれるから。」 | |
「生きる上での苦悩がとても作品が伝わってくる。感情描写がとても上手で、自分と重なり合うところがあって作品全般に共感を覚えたから。」 | |
3位『銀河鉄道の夜』 | 「全ての文章が透明で美しく、心に突き刺さります。痛みを伴う美しさを感じ、命を考えさせられるので、この作品が好きです。」 |
「色彩と音楽に満ちた文体で、読んでいて楽しいから。」 | |
「情景描写がとても美しいから。自分の目線では見えないものを見せてくれるから。」 |
【100人にアンケート調査】おすすめの純文学作家ランキング
ブックスコレクションでは、読書好き100人に好きな作家についてもアンケートを実施。
最も票を多く集めたのは夏目漱石で、次いで太宰治、その次に宮沢賢治がランクインしました。
日本文学でも著名な作家が多くランクインしていますね。
続けて、上記100人にその作家が好きな理由についてアンケート調査を実施。
1位から3位までの回答を一部抜粋しています。
作家名 | 好きな理由 |
---|---|
1位 夏目漱石 | 「表現が幻想的だから。」 |
「時代を経ても楽しめる文学になっていて、心が動かされるから。」 | |
「どの作品を呼んでもハズレがなく、安定の面白さがあるから。」 | |
「現代の感覚でも読みやすい文体で、楽しく読み進められる。」 | |
2位 太宰治 | 「身を削って人生を切り売りしている。書くことが生きる支えのようで、儚げで危なっかしいところが良い。」 |
「文章が現代的で読みやすい。少し捻くれている感じがいい。」 | |
「人間の弱さと強さの両面を扱った作品群が魅力的です。」 | |
3位 宮沢賢治 | 「風の又三郎ややまなし、そしてイーハトーブなど、独特な言い回しの語感が好き。」 |
「童話や詩の美しさ、悲しさもさることながら、夭折した人物として、その人生にも儚さを感じるところが魅かれる点です。」 | |
「童話を通して、人としてのあり方を上手く説いているから。」 |
・調査対象:読書好き100人
・調査期間:2024年2月
・調査方法:インターネットによる対象者へのアンケート
・調査機関:ブックスコレクション編集部
【文豪小説も】近代作家の読みやすい純文学小説6選
まずは近代の純文学・作家一覧を紹介します。
夏目漱石や泉鏡花など、明治から昭和初期にかけて書かれた、時代を超えて読み継がれてきた文豪小説を読んでみましょう。
こころ
夏目漱石が著した『こころ』は、高校生の教科書にも採用されるなど、一度は聞いたことがある作品でしょう。
本作では、将来に悩む語り手の「私」が鎌倉で出会った先生との交流や、先生の過去が描かれています。
先生は、重い過去を抱えながら生きてきましたが、「私」に打ち明けることにします。
人間が持つ罪深さや友情と恋愛の葛藤、現代社会への洞察が繊細な筆致で鋭く描いた文豪小説で、初心者も読みやすいのがポイント。
高校生の教科書にも載った孤独と葛藤を描いた日本文学の名作
発売日 | 1952年3月4日 |
出版社 | 新潮社 |
著者 | 夏目漱石 |
高野聖
ある旅僧が、飛騨の山越えをした時に体験した不思議な話が語られます。
旅僧は、通りすがりの薬売りを助けるために危険な旧道へ進みました。
蛇や山蛭に襲われながら、孤立した民家にたどり着きます。そこで美しい女に手当をしてもらいますが、女には恐ろしい秘密があり…。
美しい女の力や旅僧の遭遇した恐怖を描き、読者を引き込んでいきます。
泉鏡花の『高野聖』も、高校生の教科書に採用されたことがある純文学作品です。
美女の魅了された旅僧が体験した幻想的なストーリーの文豪小説
発売日 | 2013年6月21日 |
出版社 | KADOKAWA |
著者 | 泉鏡花 |
小説 人間失格
近代作家である太宰府の『人間失格』は、夏目漱石の『こころ』と並んで累計発行部数の1位、2位を争う小説です。
人間社会の中で上手く生きることができない主人公の葉蔵が、破滅に向かっていく様子が描かれています。
人間の弱さ、心の汚い部分、葛藤などが丁寧に描写されていて引き込まれる作品です。
求愛のため別のキャラクターを演じ続けた主人公に自分を重ねる人も多いかもしれません。
現代人にも響く心の闇を描き出す衝撃的な日本文学の名作
発売日 | 2021年6月3日 |
出版社 | 文響社 |
著者 | 太宰治 |
友情
脚本家を目指す主人公・野島は、杉子という美しい娘に恋心を抱きます。
野島は親友の大宮に片思いを相談。
大宮は有名な作家で、頭が良く思いやりもある人柄で、野島を応援します。
しかし、野島と杉子の距離は縮まらないまま。
徐々に、野島と杉子、大宮の微妙な三角関係になっていき…。
「友情」は、恋愛と友情で揺れる登場人物の心情が細やかに描かれている近代の文豪小説です。
平易な表現で中編なので、中学生でも読みやすいでしょう。
友情と恋愛の間で揺れる心情を細かく描いた読みやすい近代恋愛小説
発売日 | 2003年3月14日 |
出版社 | 岩波書店 |
著者 | 武者小路実篤 |
新編 銀河鉄道の夜
幻想的な世界観が特徴の近代作家・宮沢賢治の代表作品。
本書には『セロ弾きのゴーシュ』を含む14編が収録されています。
『銀河鉄道の夜』では、ジョバンニとカムパネルラの冒険物語が銀河鉄道を舞台に展開します。
物語を読み進めるうちに、真の幸せの意味について考えさせられるでしょう。
美しい文章と世界観が魅力的な純文学の名作で、中学生から大人まで、幅広い世代におすすめの日本文学です。
宮沢賢治の魅力あふれる世界観が広がる宇宙を舞台にした幻想的な名作童話集
発売日 | 1989年6月19日 |
出版社 | 新潮社 |
著者 | 宮沢賢治 |
砂の女
『砂の女』は、近代作家・安部公房の長編小説。
都会に住む教師の仁木は昆虫採集が趣味。
休暇中に訪れた砂丘で、村人に嵌められて砂穴の家に閉じ込められます。
家には女が住んでいて、毎日砂掻きの労働を強いられていました。
主人公は必死に砂穴から脱出を試みますが…。
現代社会からの疎外や不安、共同体の不条理さを痛感する作品。
安部公房の著書の多くは難しいですが、「砂の女」は初心者でも比較的読みやすいでしょう。
砂の部落に迷い込んだ男が自由を求めて奮闘する前衛的な日本文学作品
発売日 | 1981年2月27日 |
出版社 | 新潮社 |
著者 | 安部公房 |
【村上春樹も】初心者も読みやすい現代作家の純文学小説6選
近代作家のおすすめ純文学小説を集めました。
恋愛をテーマにしている小説や生きる意味を考えさせられる小説、中学生にもおすすめな面白い小説もあります。
放課後の音符
高校生の女の子たちが恋愛に憧れる様子を見事に描いた短編集。
30年以上前に初版が発行されましたが、現代の高校生にも共感できるポイントが多く、いつになっても色あせません。
女子高生のリアルな世界観を描いていて、山田詠美さんが織りなす純粋で綺麗な言葉の美しさで物語が綴られています。
恋愛小説初心者にもおすすめな読みやすい純文学作品です。
高校生のキラキラした恋と切なさが詰まった純文学作品
発売日 | 1995年3月1日 |
出版社 | 新潮社 |
著者 | 山田詠美 |
風の歌を聴け
現代作家を代表する村上春樹のデビュー作。
群青新人賞を受賞した作品で、青春の一片を軽快なタッチで描いています。
海辺の街に帰省中の大学生が、かけがえのない友人からおもいがけない告白を受けます。
さらに不思議な女の子との出会いや交流を通して、忘れがたい夏の思い出の数々が刻まれることに。
青春小説が好きな人や、村上春樹の作品を読んでみたい初心者におすすめです。
青春の切なさと軽快さが融合した村上春樹のデビュー作
発売日 | 2004年9月14日 |
出版社 | 講談社 |
著者 | 村上春樹 |
博士の愛した数式
昔の交通事故により80分しか記憶がもたない数学者・博士と、家政婦とその息子との交流を通じて愛を見出す感動小説。
80分という限られた時間の中で、3人は友情を深めていきます。
人柄や関係性が丁寧に描かれていて、切なくも心温まるストーリーを味わえます。
数学や算数が苦手な人も、博士の教えてくれる数の世界に魅せられるでしょう。
映画化や舞台化もされていて、初心者や中学生にもおすすめの名作です。
限られた記憶の中で奇跡の愛を見つけた博士と家族の感動物語
発売日 | 2005年12月1日 |
出版社 | 新潮社 |
著者 | 小川洋子 |
ヘヴン
『ヘヴン』は、現代作家である川上未映子の作品です。
クラスメイトからいじめられている主人公の「僕」は、ある日自分の筆箱に手紙が入っていることに気付きます。
クラスメイトの女子からの手紙には「わたしたちは仲間です」と書かれていました。
その日から、2人の交流が始まります。
この作品は、世界の見え方は人によって様々だという面白い視点から描かれています。
いじめと友情が交錯する世界のあり方を描いた純文学作品
発売日 | 2012年5月15日 |
出版社 | 講談社 |
著者 | 川上未映子 |
コンビニ人間
第155回芥川賞を受賞した『コンビニ人間』は、作家・村田沙耶香の長編小説です。
主人公は、世間から見ると非合理的な考えを持っていて、唯一コンビニ店員として働いている時だけは自分の存在意義を感じられます。
軽快で読みやすいテイストで描かれ、時には笑ってしまうような面白い作品です。
普通に生きるとは何かと考えさせられるような内容となっています。
純文学の初心者や、中学生でも読みやすい一冊でしょう。
コンビニ店員を通して「普通」の意味を問いかける面白い純文学作品
発売日 | 2016年7月27日 |
出版社 | 文藝春秋 |
著者 | 村田沙耶香 |
推し、燃ゆ
『推し、燃ゆ』は第164回芥川賞を受賞した作品で、現代作家の宇佐美りんは芥川賞受賞時現役の大学生だったそう。
若者らしい言葉と視点が興味深い作品です。
推し活をしている女子高生のあかりが主人公で、現代に増えている推し活をテーマにしています。
お金も時間もかけて応援していた推しを失った末、あかりが見つけた生きる意味は何なのかが最大の見どころです。
現代らしい推し活をテーマにした初心者でも読みやすい芥川賞受賞作品
発売日 | 2020年9月11日 |
出版社 | 河出書房新社 |
著者 | 宇佐美りん |
まとめ
泉鏡花などの文豪小説から村上春樹など、近代・現代の純文学のおすすめ作品や作家一覧、ランキングを紹介しました。
まだ純文学に触れたことがない初心者の人も、純文学とはどんな作品なのかが分かっていただけたでしょう。
美しい文章が魅力の純文学ですが、人の心の複雑さを描いたものから社会への疑問を鋭く描くものまで様々な作品があります。
中学生におすすめな面白い純文学作品もあるので、この記事を参考にぜひ手に取ってみてください。
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