『少女終末旅行』のラスト・最終回を考察 最上層や結末も解説
『少女終末旅行』とは、2014年よりWEB漫画サイト『くらげバンチ』で連載されていた、著者つくみず氏によるSF漫画です。
少女2人の醸し出すほのぼのとした空気感と荒廃した世界観のギャップが魅力で、アニメも製作されました。
本記事では最上層や黒い石など作中のキーワードや、最終話の2人の結末について解説。
作中の「生きるのは最高だったよね」というメッセージも考察していきます。
この記事は『少女終末旅行』のネタバレを含みます。
作品の結末に関するヒントを知りたくない人は注意してください。
『少女終末旅行』のあらすじ
舞台は栄華を極めた文明が衰退した荒廃した世界。
生き物は死に絶え、遺されたのは朽ち果てた機械と廃墟となった都市だけ。
そんな世界を2人きりになったチトとユーリはあてもなく彷徨います。
食料をなんとか確保したり、綺麗な水辺を見つけて洗濯したりするなどささやかに生活する中で、2人はさまざまな出会いと別れを経験。
果たして二人がたどり着いた場所とは…。
『少女終末旅行』の魅力とは
『少女終末旅行』の魅力は荒廃した世界という絶望的な状況に置かれながら、ほのぼのと過ごす2人の少女の日常系の空気感が最大の魅力でしょう。
アニメも4巻までの内容が放映され、サウンドがあることによってその雰囲気が引き立っています。
ラストに向けての最上層についての伏線、かつて栄えた文明や宗教など、SF好きにはたまらない要素が盛り込まれています。
読者によって解釈が分かれる結末も美しい作品です。
キャラクター紹介
『少女終末旅行』 登場キャラが少なく、主にこれから紹介する2人の少女にスポットが当てられて物語が進んでいきます。
主要キャラが濃く描かれ、共感することでより深い没入感で物語を楽しめます。
チト
長い黒髪を2つに束ねた、本を集めたり、日記を書いたりするのが好きな少女。
理知的な性格の持ち主で常に冷静沈着に行動するタイプです。
持ち前の知識を活かして、辺りの探索に使用している愛車「ケッテンクラート」の運転と修理をこなします。
ユーリ
ウェーブがかった金髪の少女で、肩から銃器を提げています。
食べることが大好きで、楽観的すぎる思考の持ち主。
細かいことは苦手な性格でチトに任せきりですが、その代わり、体を使う仕事や銃火器の扱いを得意としています。
『少女終末旅行』の世界観
舞台となる都市は多層の巨大都市。
戦争の傷跡が残る廃墟が延々と立ち並んでいます。
電力が通っている場所は稀で、残っているのは兵器の残骸などの瓦礫ばかり。
食べ物は基本野戦食レーションであり、まさに終末そのもの。
ロストテクノロジーやかつて信仰されていた巨大な宗教の名残などSFならではの虚無感も感じます。
【考察】『少女終末旅行』のラストについて【ネタバレ注意】
ここからは本作のラストについての考察を交えて触れていきます。
最上層にはなにがあるのか、『少女終末旅行』の最終話で2人はどのような結末を迎えるのでしょうか。
最上層とは? なぜ向かった?
物語の序盤に、2人は川に流れてきた魚を見つけて食べます。
どうやらその魚は上層から流れてきたものらしく、2人は最上層にはなにかあるのかもしれないと考えるのでした。
もしかしたら、最上層には自分たち以外の生存者が居て、豊富な物資や食料があるのかもしれないという希望を胸に、2人は最上層を目指して旅をします。
最上層には何があった?
やっとのことで2人は最上層にたどり着きますが、共に旅をしてきた愛車『テッケンクラート』が故障してしまい、もう修理はできない状態に。
2人は持てるだけの荷物を持ち、1日中歩き続けます。
物資はほぼ底をつき、後がない状態で螺旋階段を登り切った2人ですが、そこには広い雪原と大きな黒い石があるだけでした。
黒い石とは何?
ほかには何もない最上階にあった、最終話で2人が背中を預けるように寄りかかっていた黒い石。
この黒い石はラストシーンの2人その後を考察する1つの要素になっています。
自律機械に書かれている模様がこの石にも書かれていたことから、この石が2人を助ける手掛かりになったのではないかという考察も。
麦畑に立つ二人
このシーンから様々な結末の考察がなされていて、ひとつは2人は死後の世界で、麦畑が示唆する食べ物に困らない世界に行くことができた、という解釈。
もうひとつはバックにうっすら描かれた前述した黒い石と思しきシルエットから、2人は生きていて、最上階と繋がった空間の麦畑にたどり着けたと解釈することもできます。
ラストは死んだ?生きている?
このように『少女終末旅行』最終話の結末の解釈は読者に委ねられていて、2人の生死について結末を決定付ける描写はありません。
しかし、単行本化の際加筆されたあとがきや、アニメのエンディング内での螺旋階段を降りる描写から、2人は最上階で生きる気力を取り戻して階段を降りているのではとの説も。
このように2人は最終話の後もどこかで生きているのではないかと、希望も込めてファンの間では考察されています。
【考察】「生きるのは最高だったよね」から伝わるメッセージ
極限の状態で最上階までたどり着いた2人。
ここまで弱音を吐かなかったチトは、「これで正しかったのかな…」と初めて弱音をこぼします。
ユーリはわからないと答えた後に「生きるのは最高だったよね」と言います。
来た意味がなかったとしても、2人でここまで生きたことに意味があったのでしょう。
『少女終末旅行』を読む&観る
ここからはコミックスを1冊ずつ紹介します。
4巻までの内容にあたるアニメもぜひチェックしてみて下さい。
少女終末旅行 1
荒廃した世界に2人ぼっちの少女チトとユーリ。
愛車「ケッテンクラート」に乗り、廃墟と瓦礫ばかりの都市を彷徨います。
自分たちの知識と力でほのぼのとその日その日を生きる2人。
そんな中、地図を作る青年カナザワと出会います。
この世界の成り立ちを知る彼から、上層にはまだ物資があるかもしれないという情報を得ますが…。
絶望的な状況でもほのぼのとした日常を送る2人の少女の姿が魅力
発売日 | 2014年11月8日 |
出版社 | 新潮社 |
著者 | つくみず |
少女終末旅行 2
カナザワとの別れ際に2人はカメラをもらったのでした。
カナザワからもらったカメラであちこちを撮影する2人。
2人は細長い不思議な像が沢山あることに気付きます。
広い施設のようなところに神様のように祀られており、そこはまるで寺院のよう。
飛行機を製造して空の彼方へ飛び立とうとする女性、イシイとの出会いも描かれます。
朽ちた世界に残された過去の宗教や文明が描かれるSF好きには嬉しい一冊
発売日 | 2015年7月9日 |
出版社 | 新潮社 |
著者 | つくみず |
少女終末旅行 3
食料生産施設があることをイシイから聞いた2人は食料を求めて施設へ向かいます。
施設では食料を見つけることはできませんでしたが、原料となる粉、砂糖、塩を発見し、固形食糧レーションを作ることに成功します。
作り上げた甘いレーションの味に幸せを感じる2人。
その後既に機能を失った魚の養殖施設にたどり着くと、そこで使われていた機械と出会います。
機械と心を通わせて、命の定義を考えるチトとユーリの姿は必見です
発売日 | 2016年2月9日 |
出版社 | 新潮社 |
著者 | つくみず |
少女終末旅行 4
2人はかつて写真に撮った不思議な像にそっくりな生き物、ヌコに出会います。
2人はヌコを連れて旅を続けます。
カナザワのカメラにはかつて生きていた多くの人々の写真が収められていました。
今の世界は寂しすぎると悟った2人は、ヌコの仲間のキノコのような生き物と出会い、地球は終わりに向かっていることを告げられます。
絶望的な状況でも歩みを止めない2人が読者の心を揺さぶる一冊
発売日 | 2016年11月9日 |
出版社 | 新潮社 |
著者 | つくみず |
少女終末旅行 5
キノコのような生物から最上層に続く昇降機が西にあると聞いた2人は西を目指します。
ついに最上層へ続く塔を発見し、物資が尽きる前に頂上にたどり着こうと決心します。
塔を管理する人工知能は、2人に昇降機を作動させる代わりに自分を消滅させるためのプログラムの実行を2人に委ねます。
2人が旅をしている理由や、愛車ケッテンクラートとの別れも描かれます。
世界と物語の終わりを感じさせるもの悲しさがラストを引き立てます
発売日 | 2017年9月8日 |
出版社 | 新潮社 |
著者 | つくみず |
少女終末旅行 6
愛車は壊れ、物資はほぼ底をつき、追い詰められていく2人。
そんな中でも2人は手を握り合って進み、旅の目的地である最上層にたどり着きます。
最上層にあったものは、雪をかぶった大きな黒い石と広い空だけで、2人の期待していたようなものはなにもありませんでした。
世界が終わりを迎えようとする中、「生きるのは最高だったよね」というセリフが響く最終話。
ここまで生き抜いてきた2人がどんなラストを迎えるのか、必見です
発売日 | 2018年3月9日 |
出版社 | 新潮社 |
著者 | つくみず |
アニメ『少女終末旅行』
公開日 | 2017年10月 |
監修 | 尾崎隆晴 |
出演 | 水瀬いのり、久保ユリカ |
まとめ
今回は『少女終末旅行』という作品を最終話でのラストシーンの考察や最上層にあったものの意味の考察と共に紹介しました。
2人がほのぼのと、懸命に生きる姿や読み手にの解釈に委ねられた結末が美しい物語です。
SFや荒廃した世界観の作品が好きな人や、日常系作品の雰囲気が好きな人には一度手に取ってほしい漫画です。
本記事を読んで気になった人はぜひチェックしてみて下さい。
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