『おやすみプンプン』を考察! あらすじや伏線、気持ち悪い鬱シーンを解説
鳥の落書きのような顔の主人公プンプンと周囲の人々の交流を描く、作者浅野いにおの漫画『おやすみプンプン』。
鬱シーンや心に残る名言が話題になった作品です。
ラストに向けた伏線など最終回への巧妙な仕掛けが読者を引き込みます。
ヒロインの愛子や翠、南条、清水、関くん、神様などの個性的なキャラクターも魅力の一つ。
今回はそんな『おやすみプンプン』のあらすじ内容や名言、プンプンの顔はなぜ鳥なのかなどを解説します。
この記事は『おやすみプンプン』のネタバレを含みます。
作品の結末に関するヒントを知りたくない人は注意してください。
作者:浅野いにお『おやすみプンプン』のあらすじと評価
作者浅野いにおによる『おやすみプンプン』の大まかなあらすじは、主人公プンプンが初恋の相手の陰に囚われながら波乱の7年間を過ごしていく話。
作品では毒親やアダルトチルドレン、学生時代の鬱屈した感情やドロドロした人間関係などが描かれ、救いのない人間ドラマが多くの共感を集めました。
気持ち悪いほど人間の心情に切り込んだ描写や考察したくなる展開で、読む人の心を傷つけつつ、先が気になる内容で惹きつけられます。
また、主人公プンプンと家族がひよこのような鳥の顔をしているのも特徴で、ポップさとストーリーの鬱シーンとのギャップもハマるポイントです。
『おやすみプンプン』の登場人物
プンプンや田中愛子、雄一おじさん、南条幸など、おやすみプンプンのかわいい登場人物たちを紹介。
あらすじでもわかる通り、鬱シーンの多い本作ではどこか影のある、ちょっと気持ち悪いキャラクターが多く、登場人物の名言が心に刺さります。
プンプン
プン山プンプンは本作の主人公で、物語の開始時点では小学5年生。
本来は普通の少年の姿ですが、作中ではかわいいヒヨコのような顔で描かれています。
両親が離婚後、苗字は「小野寺」になりました。
プンプンは引っ込み思案で内気な性格で、悩みの多い少年です。
小学生時代に田中愛子と出会い、距離を縮めるものの、約束を果たせず疎遠になってしまいます。
田中愛子
有名になることを夢見るかわいい少女、愛子ちゃんこと本名田中愛子。
プンプンの初恋の相手です。
プンプンから告白され仲良くなりますが、好意の大きさ故にプンプンに対して重い約束事を要求してしまいます。
田中愛子の母親は新興宗教の信者で、布教活動に同行させられているため母親のことを良く思っていません。
愛子のメンヘラ具合は読者から気持ち悪いともいわれますがプンプンは愛子に執着しています。
プン山プンプンパパ
プンプンの父親。
プンプンとは宇宙について語ったり、彼に天体望遠鏡をプレゼントしたりと、親子関係は良好でした。
穏やかな人物でしたが、会社をリストラされたために夫婦喧嘩が勃発。
プンプンを守るためにプンプンママに手をあげてしまいます。
離婚後、プンプンとも離れ離れに。
プン山プンプンママ
プンプンの母親。
プンプンには愛情を持つ一方で、自己中心的でヒステリックな言動も目立つ人物です。
息子・プンプンとは折り合いが悪く、プンプンからは良い印象を持たれていません。
病気発覚を機に言動を改めようとしますが、病の克服もプンプンとの和解もできないままこの世を去ります。
雄一おじさん
プンプンのおじさんで、美大の大学院卒業後は陶芸教室の講師でしたが、トラブルを起こして退職。
プン山夫婦の離婚後、雄一おじさんがプンプンの保護者になりました。
独特の人生観を持ち、繊細かつ不安定な性格で、プンプンは自分とどこか似ている雄一おじさんを大切に思っています。
翠さん
翠さんとは、プンプンのおじさん・小野寺雄一の恋人。
初登場時はプンプンママが入院した病院の看護師で、再登場時は、喫茶店のアルバイト店員をしています。
雄一が不倫をして失踪した際、プンプンと関係を持ってしまった寂しがり屋な一面も。
翠さんは紆余曲折あり雄一と結婚、雄一との子を出産します。
南条幸
プンプンの4年先輩の漫画家志望の女性、南条幸。
プンプンと南条幸は絵画展で出会い、彼が書き留めていた感想文にセンスを見出し、漫画の原作執筆を提案します。
南条幸の性格にはプンプンママに似たところも垣間見えますが、面倒見が良く優しい、プンプンの良き理解者です。
『おやすみプンプン』の魅力を解説!
ここからはおやすみプンプンの魅力の正体について解説します。
思わず考察したくなるラストに向けての伏線や主人公の姿や顔。
愛子をはじめとする濃い登場キャラの面々、泣けるような鬱シーンの数々、衝撃の最終回など本作の魅力を紹介。
心理描写がリアルで怖い
本作の魅力1つ目はキャラクター描写です。
ひとりひとりの心理描写や人生エピソードがとにかく緻密に描かれています。
主人公のプンプンに加え、その周囲の人の感情も見て取れるため読者は感情移入しやすいのです。
登場人物がどんなに悩んでも、ただ時は進むという虚無感も鬱シーンの多い本作の世界観を際立たせています。
魅力的でかわいいキャラクター
エぐ怖い内容の本作ですが、それとは裏腹にキャラクターのビジュアルがかわいいのが特徴です。
鳥の形がかわいいプンプンや両親、おじさんには和むという人も多いでしょう。
またプンプンの運命の相手である田中愛子は、見た目だけでなく内面も魅力的でかわいいキャラクターです。
丁寧に描き込まれた背景
おやすみプンプンをはじめとする作者、浅野いにおさんの漫画は、細かく書き込まれたリアルな背景が特徴です。
画像加工ソフトを活用したり、デジカメで撮った写真を直接ペンでなぞって描きおこしたりして作成しているそうです。
抽象画のようなプンプンとリアルな背景の対比が独特の世界観や雰囲気を演出しています。
ラストへ向かって張り巡らされた伏線
愛子との出会いと、愛子の母について、カルト集団『ペガサス合奏団』の話、南条幸の存在。
1度読んだだけでは理解するのが難しいラストへ向けた伏線の数々が本作の魅力です。
何度も読み返して考察することで、作者が『おやすみプンプン』に込めたメッセージを深く理解できるはずです。
心に沁みいる鬱シーンの数々
後味の悪い結末でも、心に沁みる、怖いほど刺さると評価されているおやすみプンプンの鬱シーンの数々。
各章のあらすじに沿って鬱シーンを紹介していきます。
小学生編
転校生の田中愛子はプンプンと両想いになりますが、彼女には前の学校で愛子の母親の宗教活動のせいで居場所を失った過去が。
プンプンに『彼は自分を絶対に裏切らない』と期待した愛子は、「一緒に鹿児島へ行こう」と、半ば強引に約束させます。
結局その約束を果たせなかったこと、プンプンの両親の離婚をきっかけに愛子とは疎遠に。
彼女は一生プンプンの心を縛り付ける原因になる鬱シーンです。
中学生編
未だ愛子に想いを寄せるプンプン。
ある日バトミントン部の先輩、矢口と愛子が親しい様子を見て落ち込むプンプンですが、愛子は矢口に対して興味がない様子。
矢口との一件で繋がりを取り戻し、小学生の頃交わした約束を守れなかったことを謝るプンプン。
愛子は笑って許し、今から行こうと楽しげに誘います。
怖いと感じた彼は誘いを断りますが、約束再び破った罪悪感と不甲斐なさから、それ以来ふさぎ込んでしまいます。
高校生編
プンプンは中間試験後の打ち上げで、蟹江梓と2人で抜け出し、週末一緒に梓の姉が参加するという展覧会へ出かける約束をします。
出かけた日の帰り道、プンプンは梓と口論になり、梓に襲いかかるも未遂に終わります。
梓に強姦魔と噂されいじめられるのではと心配するプンプンでしたがそうなることはありませんでした。
水に流してくれた彼女の優しさに、自分の至らなさを感じた彼はもう誰かを好きになるのはやめようと誓います。
最終回の結末も鬱?
プンプンと愛子は高校を卒業した数年後に偶然再会。
話をするうちに彼女は愛子の母から精神的、肉体的虐待を受けながら、親戚の元で働かされていることがわかります。
数日後、愛子の顔の痣を見てプンプンは、彼女と暮らすことを決心。
2人は承諾を得るため、愛子の母親に会いに行くことにしました。
最終回の結末に向けて2人はどのような行動を起こすのか、衝撃のラストは見逃せません。
ヒロインの愛子の悲惨な境遇とヤンデレぶり
愛子は家庭環境が複雑なため愛情に飢えており、それがヤンデレ的言動として現れます。
例えば、鹿児島に2人で行くと約束をしたときにの『裏切ったら殺す』という発言。
また、中学生になり疎遠にだった2人が久しぶりに交わした会話からもその傾向が伺えます。
それは『完全にわかり合える人と二人きりになれるなら、あたしはその瞬間に死んでもいい。』 といったものです。
そのヤンデレぶりはプンプンに怖い、気持ち悪いという感情を植え付けます。
清水、関くんとペガサス合奏団
愛子の母親が狂信していた新興宗教の教祖の次男が率いる謎多きカルト集団『ペガサス合奏団』。
清水は母が死亡して以来、関と行動を共にし、彼に依存するようになります。
しかし程なくして、『ペガサス合奏団』のリーダーであるペガサスこと星川俊樹に出会い、自立心が芽生えて関とは疎遠に。
清水はのちに『ペガサス合奏団』に入団します。
【プンプンの正体とは?】作品の伏線・考察を解説
7年間に渡る物語のため、物語の鍵を握るキャラクターが最終回への伏線として前半に登場することがあります。
例えば後のキーキャラクターである南条幸は、プンプンと出会うのは物語後半です。
しかし、実は2人は子どもの頃既に廃工場で出会っているのです。
このように何度も読み返して考察したくなるラストに向けた伏線が本作の結末を盛り上げます。
プンプンと愛子の共依存の関係
愛子の母との関係性をはじめ不幸な家庭環境にある愛子を助けたいと思うプンプンと、プンプンがいれば他に何も要らないと思う愛子。
一見すると2人は相思相愛の関係に見えますが、一方で共依存の関係であるとも言えます。
プンプンは愛子の不幸な姿に救われた過去に依存して生きているから、何も上手くいかないというのがなんとも救われません。
お互いを想う気持ちよりも、裏切られるのが怖いという気持ちが上回ってしまうのです。
プンプンの顔はなぜ鳥みたい?
プンプンの顔はなぜ鳥のようなのでしょうか?
作者いわくプンプンがなぜ鳥の顔なのかというと、読者が主観を投影できるようにするためとのこと。
幼少期はひよこみたいな鳥の顔ですが、彼が自分を偽り始めると顔が黒塗りになります。
また、彼自身が主体性を持つ場面では人間の顔になるなど、最終回まで顔の変化には意味があるのです。
『おやすみプンプン』の名言を紹介
続いておやすみプンプンの評価されている魅力の1つ、名言について解説していきます。
本作の登場人物が放つ名言は心に沁みるものが多いです。
「みんなに馬鹿にされるのがこわかったんでしょ? そんなの勝手に言わせとけばいいの!! 他人の足ひっぱるような奴なんて、絶対幸せになんてなれないんだから!!」 by 愛子
小学生の時、将来の夢について書いた作文を朗読する授業で、プンプンは「皆をメツボーから救う科学者になりたい」と書きました。
しかし、バカにされるのが怖い彼は発表の前に教室から逃げ出してしまいます。
その時彼に愛子がかけたのがこの言葉でした。
出る杭は打たれる世の中で生きづらさを抱えている多くの人に響く名言です。
「いやぁ~プンプンはホントいい子だねぇ ヘドが出るほど。みんながみんな幸せなんてあり得ると思うかい?人の幸せは他人の不幸の上に成り立ってるんだぜ?」 by 神様
プンプンが呪文を唱えると現れる神様の名言。
自分が傷つかないように偽善者として振る舞うプンプンでしたが、心の底では本当の自分の正体とのギャップに苦しんでいました。
神様のセリフを通して表面化されていないプンプンの心の弱さが浮き彫りになります。
「人生に於いて ほとんどの出来事は自業自得なんだ。自分で選び 歩んできた道じゃないか。そうだろう?」 by 雄一
雄一がプンプンの行いを客観的にみて放った一言。
人生で様々な経験を積んできた小野寺雄一の人生観が濃く表れた名言です。
雄一自身が女性関係にだらしなかったゆえに起きた過去の出来事への自戒も込められているのかもしれません。
「子供の頃は見えないものを見えるって言い張って、見えなくてもどこかにあるって信じる事が唯一の希望のときもあって、今はその過去を捨てる事で一歩前に進んだ気分になってる。」 by 幸
漫画家として軌道に乗り始めた幸が、絵画展に出品した天の川を描いた作品を捨てる際に言ったセリフです。
絵を捨てることで夢見がちだった頃の自分と決別しようとする幸。
自分の死によって幼少期から引きずってきた破滅的な願望を完結させようとするプンプンの2人の対比を表す名言です。
おやすみプンプン書籍紹介
不遇な家庭環境の主人公のプンプン。
自分と同じ悩みを持つ転校生、田中愛子と仲良くなり、2人は愛子の鹿児島の親戚の家に行くことを約束します。
しかし、プンプンの両親の暴力事件による離婚や、愛子との約束を果たせなかったことがきっかけで、2人はやがて疎遠に。
愛子に囚われ続けるプンプンの波乱の7年間を描いた物語。
心に刺さるような鬱シーンや気持ち悪い感情を体験したい人におすすめの漫画
発売日 | 2007年8月3日 |
出版社 | 小学館 |
著者 | 浅野いにお |
まとめ
今回は漫画『おやすみプンプン』をあらすじやなぜ鳥なのかといった考察、評価にも触れつつ魅力を解説しました。
脇を固める愛子や翠などの登場人物も魅力で、ラストに向けた伏線が生きる圧巻の最終回は見逃せません。
作者・浅野いにおのセンスが光る、鬱シーンの中に散りばめられた名言にも注目です。
鬱シーンや気持ち悪いドロドロの感情に心を掴まれた人ほど、この物語の結末を目にしたときの衝撃は心に残るものになるでしょう。
本記事であらすじや内容を読んでどんな結末を迎えるのか興味をもった人は、ぜひこの作品を手に取ってみて下さい。
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