『時計じかけのオレンジ』のあらすじやラストシーンの意味について解説
KEYWORD
『時計じかけのオレンジ』は、同名小説を原作として1971年に公開された映画です。
スタンリー・キューブリック監督による独特の演出や皮肉の効いたストーリーは、今なお高く評価されています。
一方で、過激な描写が多いことや、衝撃的なラストシーンでも話題になりました。
この記事では、賛否両論を巻き起こした映画『時計じかけのオレンジ』のあらすじやラストシーンの意味について、詳しく解説します。
この記事は『時計じかけのオレンジ』のネタバレを含みます。
作品の結末に関するヒントを知りたくない人は注意してください。
『時計じかけのオレンジ』のあらすじ
『時計じかけのオレンジ』の舞台は、近未来のロンドンです。
15歳の少年アレックスは、不良仲間とともに犯罪行為に明け暮れる日々を送っていました。
しかし、ある日アレックスは殺人を犯した挙句、仲間に裏切られて警察に逮捕されてしまいます。
懲役14年の判決を受けたアレックスは、刑期を短くするために新しい心理療法の被験者となりました。
この「ルドヴィゴ療法」により、残酷な行為に対する嫌悪感を植え付けられたアレックス。
健全な人格に矯正されて出所したものの、家族や昔の仲間には受け入れてもらえません。
そんななか、アレックスが助けを求めた家には、かつて自分たちがリンチした作家が住んでいたというあらすじです。
『時計じかけのオレンジ』の魅力
映画『時計じかけのオレンジ』のあらすじを読んで、続きが気になった人もいるのではないでしょうか。
作品の魅力として挙げられるのが、現代社会を風刺したストーリー。
単に暴力描写が激しいだけではなく、善悪や人間の本質について考えさせられる内容となっています。
また、キューブリック監督は、近未来の世界観をファッションやメイクで個性的に表現。
アレックスたちが話すナッドサット言葉にも、現代の若者言葉に通じる斬新さが感じられます。
そして、ラストシーンが何を意味するのか考察しがいのあるところも、大きな魅力です。
『時計じかけのオレンジ』は怖い? 上映禁止だった?
『時計じかけのオレンジ』は名作といわれる一方で、過激な表現に対して「怖い」という意見も見受けられます。
過去には、公開後に一部の国で上映禁止となる事態も起こりました。
少年による模倣犯罪が発生し、キューブリック監督のもとに脅迫状が届くようになったそうです。
その結果、1973年から監督が亡くなる1999年までの27年間、イギリスでの上映は禁止されていました。
『時計じかけのオレンジ』の登場人物
『時計じかけのオレンジ』といえば、インパクトのあるキャラクターも注目ポイントです。
ここからは、主な登場人物について解説します。
アレックス・デラージュ
アレックス・デラージュは、『時計じかけのオレンジ』の主人公です。
利己的な性格で、不良グループのリーダーとして非行を繰り返していました。
また、自室に卑猥な絵を飾ったり、引き出しで蛇を飼ったりと、異常とも思える行動が目立ちます。
ベートーベンの交響曲第9番を好んで聴いているところも、物語の重要な鍵となります。
ミスター・アレクサンダー
職業作家であるミスター・アレクサンダーは、アレックス達に襲われた被害者のひとり。
妻とともにアレックス達から暴行され、下半身不随となってしまいます。
事件のショックを受けた妻が亡くなったことから、犯人をひどく憎んでいました。
ルドヴィゴ療法を受けたアレックスが復讐相手と気づかず、自宅へと招き入れます。
内務大臣
内務大臣のフレデリックは、治安の回復を公約に掲げ、政治犯の収容に注力していました。
刑務所の収容状況を緩和するため、囚人にルドヴィゴ療法を施して出所させようと計画。
しかし、実験台に指名したアレックスが自殺未遂したことにより、非人道的行為をしたと世間から批判されます。
ディム
ディムは、アレックス率いる不良グループ「ドルーグ」のメンバーです。
さまざまな犯罪行為を働く一方で、アレックスに対しては反発心を抱いていました。
アレックスが殺人を犯した際には、警察に逮捕されるように仕向けます。
その後ディムは警察官となり、出所したアレックスに対して激しく暴行を加えました。
ジョージー
ジョージーも、不良グループ「ドルーグ」のひとりです。
ディムと同様にアレックスに反発し、陥れようとします。
アレックスの逮捕後は、警察官となったジョージー。
ディムと一緒に、再会したアレックスをリンチします。
ピート
不良グループ「ドルーグ」には、ピートという少年もいます。
ピートはディム、ジョージとともにアレックスに従いつつ、内心では反発していました。
2人と比べると、ピートはあまり進んでアレックスに逆らおうとはしていません。
しかし、結局は警察に捕まりそうになったアレックスを見捨てて逃げてしまいます。
ホームレスの老人
アレックスに暴力を振るわれた被害者として登場するのが、ホームレスの老人です。
歌っているところをアレックスに襲われており、その仕打ちを恨んでいました。
出所後のアレックスと出くわした老人は、仲間と一緒に暴力で復讐します。
『時計じかけのオレンジ』の解説
近未来が舞台の『時計じかけのオレンジ』には、架空の言語や治療法が登場します。
また、アレックスが有名映画の劇中歌を歌うシーンも印象的です。
ここでは、鑑賞時に知っておきたいポイントを解説します。
ナッドサット言葉
「ナッドサット言葉」とは、原作者であるアンソニー・バージェスが考案した架空の言語です。
『時計じかけのオレンジ』では、アレックスや不良仲間がいわゆる若者言葉として使っていました。
英語とロシア語を組み合わせることで、独特のリズムや響きが生まれています。
以下で解説する代表的なナッドサット言葉を覚えておくと、映画のストーリーがもっと理解しやすくなるでしょう。
ドルーグ | 仲間、友達 |
アルトラ | 暴力 |
トルチョック | 殴る |
ウンチング | 食べる |
ビディー | 見る |
ホラーショー | 最高 |
シニー | 映画 |
デボチカ | 女の子 |
ボルシャイ | 男の子 |
タッシュトゥック | ハンカチ |
ルッカフル | 雀の涙 |
スームカ | 醜い |
アピ・ポリ・ロジー | ごめんなさい |
ルドヴィゴ療法
「ルドヴィゴ療法」は、犯罪者の人格を矯正するための治療法です。
ルドヴィゴ療法の被験者となったアレックスは、残酷な映像を延々と見せられます。
同時に吐き気や不快感を催す薬を服用させられた結果、アレックスは暴力的な行為や思考に拒否反応を示すようになりました。
内務大臣はルドヴィゴ療法を推進していますが、犯罪者が自ら改心したとはいえないことから、アレクサンダーをはじめとして否定的な意見も上がっています。
「雨に唄えば」
物語の重要なカギとなっているのが、1952年公開のミュージカル映画『雨に唄えば』の表題曲です。
アレックスは、アレクサンダー夫妻を襲撃した際に「雨に唄えば」を歌っていました。
その後、出所して行く当てのないアレックスは、偶然アレクサンダーと再会。
アレクサンダーは最初こそ気づかなかったものの、「雨に唄えば」を歌うアレックスの声を聞いたことで、自分たちを襲った犯人だと悟ります。
タイトル『時計じかけのオレンジ』の意味
映画のタイトル『時計じかけのオレンジ』とはどんな意味なのか、解説します。
ロンドンの労働者階級が使用していたスラング「Queer as a Clockwork Orange」に由来するといわれています。
これは、「表面上はまともだが、中身はかなり変」という意味。
つまり、表向きはまともなように見えても、中身は強制的に暴力への嫌悪感を覚えさせただけ、と皮肉交じりにアレックスを表現したと考察できます。
『時計じかけのオレンジ』ラストシーンの考察
映画『時計じかけのオレンジ』のラストシーンは、何を意味しているのでしょうか。
終盤、アレックスは自殺未遂を起こすものの、一命を取り留めました。
そして、暴力的な場面を思い浮かべたり、交響曲第9番を聞いたりしても拒否反応が起こらなくなっている事実に気づきます。
ラストシーンで、アレックスは「完ぺきに治ったね」と怪しく微笑むのでした。
この場面から、アレックスがルドヴィゴ療法を受ける前の人格に戻ったと考察できます。
つまり、人間が持つ本質的な暴力性は変えられないとも考えられるでしょう。
また、人間は本当に更生できるのかという問いについても、深く考えさせられるラストです。
『時計じかけのオレンジ』を観る
映画『時計じかけのオレンジ』は、人間の本質を問うストーリーが見どころです。
近未来のロンドンに住むアレックスは、不良仲間とつるんで悪事を繰り返していました。
しかし、ある事件をきっかけに逮捕されてしまいます。
その後、アレックスは人格矯正の治療を受けて出所。
暴力行為に拒否反応が出るようになったアレックスは、本当にまともになったといえるのでしょうか。
特に、映画の考察が好きな人におすすめしたい作品です。
人間の本質とは何なのか、根本的な問いについて考察する面白さがある
発売日 | 2010年4月21日 |
監督 | スタンリー・キューブリック |
出演 | マルコム・マクダウェル、パトリック・マギー |
本ページの情報は2023年11月時点のものです。
最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。
『時計じかけのオレンジ』の原作を読む
映画『時計じかけのオレンジ』は、アンソニー・バージェスの小説を原作として制作されました。
実は、映画版と小説では結末が異なります。
ここでは、原作小説のあらすじとおすすめポイントを紹介します。
『時計じかけのオレンジ』は、1962年にイギリス人作家アンソニー・バージェスが発表した小説です。
アメリカでは最終章を削除した状態で出版されており、スタンリー・キューブリック監督はこちらをもとに映画を制作しました。
そのため、両者のあらすじは同じですが、ラストに大きな違いがあります。
最終章の有無によって作品の印象ががらりと変わるので、ぜひどちらもチェックしてみてください。
小説版の最終章によって、映画版とはまた異なる考察や解釈ができる
発売日 | 2008年9月5日 |
出版社 | 早川書房 |
著者 | アントニイ・バージェス、乾信一郎 (訳) |
まとめ
『時計じかけのオレンジ』は、1971年の公開から現在に至るまで知名度の高い映画です。
一方で、暴力描写の激しさや奇抜なビジュアルから「怖い」というイメージを持つかもしれません。
しかし、映画のストーリーには社会への風刺が込められており、さまざまな視点から考察できるところが魅力です。
『時計じかけのオレンジ』のあらすじやラストシーンの意味に関する解説を読んで、改めて映画を観てみてはいかがでしょうか。
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