カテゴリーから探す

映画『母性』の考察ポイントを解説 記憶・証言の違いなどをネタバレ解説

women's white long-sleeved top
出典:Unsplash

※本ページにはプロモーションが含まれています

2022年に公開された邦画、『母性』。
原作はイヤミスの女王と称される、湊かなえの同名小説です。
原作よりはシンプルな展開となっているものの、トリックが複雑なため1回観ただけはよく内容を理解できなかったという人も多いでしょう。
そこで今回は、『母性』のあらすじ紹介やネタバレ考察・解説をします。
本作における母性とは何なのかや結末の意味など、気になる点を徹底解説しているのでぜひ参考にしてください。

この記事は『母性』のネタバレを含みます。
作品の結末に関するヒントを知りたくない人は注意してください。

目次

映画『母性』あらすじ

湊かなえ原作の映画、『母性』のあらすじを簡単に紹介します。
教師の清佳のもとに飛び込んできたのは、女子高生の転落事件のニュース。
その原因を探っていた清佳は、自分の少女時代に回想を巡らせます。
清佳は母ルミ子からの愛情に飢えた、不遇の少女時代を送っていました。
その一方で娘には無償の愛情を注いだと訴える、母ルミ子。
やがて母と娘の語る真実が食い違い、衝撃の真相に迫るといったあらすじの作品です。

映画『母性』で描かれている母性とは

作中で描かれている母性の一つが、ルミ子とその母親、華恵の関係です。
華恵はいわゆる毒親で、ルミ子を溺愛するあまりルミ子の人生全てをコントロールするようになりました。
そんな歪んが愛情を受け継いだルミ子は、自分の娘、清佳を愛することができません。
この映画で描かれている「母性」とは、母から娘に受け継がれる呪縛のようなものと考察できます。

【ネタバレ解説】映画と原作が別物に感じるのはなぜ?

映画と原作が別物に感じられる最大の理由は、物語の展開方法の違いにあるのではないでしょうか。
原作では母の手記と娘の回想が繰り返し語られ、母と娘の捉え方の違いを対比させる構成になっていました。
一方映画では真実を明らかにするといった、原作よりシンプルな流れで物語が進みます。
また原作と映画ともに「第三者の視点」が物語の軸となっていましたが、その描かれ方に違いがあるためまるで別の作品のように感じられます。

【ネタバレ解説】信用できない語り手

『母性』は湊かなえさんが得意とする、「信用できない語り手」の存在によってあらすじが展開する物語です。
「信用できない語り手」とは映画や小説でよく使われる物語を進める手法で、視聴者や読者にミスリードをさせる効果があります。
ネタバレになりますが、映画『母性』における「信用できない語り手」とは清佳です。
しかし原作では最後までその正体はネタバレされず、映画よりも一層、読者に不安感を感じさせる構成となっています。

【ネタバレ解説】二つの視点からの母性

本作では「娘を愛せる母性」と「娘を愛せない母性」、2つの母性の形が描かれています。
一般的に、母性とは母が子を愛することです。
しかし本作は子を愛せないことも、それもまた母性の一つの形として描いているのです。
親に溺愛されて育ったルミ子は、大人になっても母に精神的に依存します。
そして自分が母になっても娘を愛するどころか、いつまでも自分自身は親に庇護される「娘」でい続けようとしました。
いつまでも娘でいたい感情、母として娘を愛したい感情、その両面性を抱えた女性の本能が「母性」なのです。

『母性』の結末シーンの考察

ネタバレになりますが結末のあらすじは、清佳の妊娠が発覚し、それをルミ子と清佳が喜び合ってハッピーエンドというものでした。
しかし2人のこれからは本当に幸せなのでしょうか。
ルミ子が清佳の妊娠を喜んだのは自分の娘を思ってではなく、「命を繋ぐこと」がルミ子の母の望みだったからと考察できます。
そうだとすれば結局ラストまで、ルミ子の視点は娘ではなく母に向いていたのです。
そして、まともに母の愛情を受けられなかった清佳が、これから自分自身の娘を愛せるのでしょうか。
「娘を愛せない母親」、その母性の呪いを清佳が解くことができるのか、視聴者に不安を残す結末で物語は幕を閉じました。

映画と原作小説との違い

映画と原作小説の違いをネタバレ込みで解説。
両作ではトリックや登場人物、結末などに大きな違いがあるのでチェックしてみてください。

原作と映画でトリックが異なる

原作と映画では、トリックが大きく異なります。
原作では、物語の語り手である第三者の正体が最後まで言及されません。
一方、映画では第三者の存在が清佳であることが明かされます。
また両作ともに作品の冒頭には高校教師が登場しますが、原作では、その高校教師が一見、清佳とは別人であるかのように描かれます。
その教師が大人になった清佳、つまり本作の語り手であることには原作では簡単には気付けないでしょう。
一方映画では、高校教師が清佳であることは最初から明白に描かれていました。

産まれてこなかった娘が登場しない

ネタバレになりますが、原作では物語中盤でルミ子が第二子を授かります。
ルミ子はその子を母の生まれ変わりだと信じ出産を待ちわびますが、結局流産してしまいました。
ルミ子は生まれることができなかった我が子を、母が好きだった「桜」と名付けます。
このエピソードはルミ子の愛情が唯一描かれた、作品の中でもかなり印象的な場面でした。
また結末で清佳が首を吊った木が、「桜」だったことも、このエピソードとまったく無関係ではないでしょう。
一方映画ではルミ子が第二子を授かった流れは、全てカットされています。

結末に違いがある

原作は清佳のセリフ、”古い屋敷の離れに灯りがともっている。ドアの向こうにわたしを待つ母がいる。こんなに幸せなことはない.。”という一文で締めくくられています。
これは、清佳もまたルミ子と同様、「母」になるよりも「娘」でいたい女性なのだということが考察できる一文でした。
一方映画の結末ではこの一文に当たる表現はありません。
そのため映画だけを観た人の中には、結末は清佳とルミ子の関係が修復してハッピーエンドだと捉える人もいるでしょう。

原作小説の著者湊かなえについて

湊かなえさんは1973年生まれ、広島県出身の小説家です。
大学卒業後は青年海外協力隊員としてトンガで活動し、帰国後は家庭科教師として働きました。
2007年に遅咲きの小説家デビューを果たし、その後『告白』で本屋大賞を受賞。
サスペンスや女性の内面描写に定評があり、「イヤミスの女王」として不動の地位を確立しています。

映画『母性』を見る・原作を読む

『母性』の考察を深めたいなら、ぜひ映画、原作どちらもチェックしてみてください。
Amazonなどで買える、商品のリンクを掲載しています。

映画 母性

母と娘の歪な「母性」の形を描いた『母性』。
売れっ子大女優、戸田恵梨香と永野芽郁がW主演を務めたことでも話題になりました。
「女性なら誰しも子供を愛するもの」それは真実なのか、女性の本質を考えさせられる作品です。
トリックが巧妙な原作に対して、映画のあらすじはより単純なので、ミステリー初心者にもおすすめです。

この作品のおすすめポイント

戸田恵梨香と永野芽郁の迫真に迫る演技にも注目、映画『母性』

公開日2022年11月23日
監督廣木隆一
出演戸田恵梨香、永野芽郁、三浦誠己
楽天で買う Amazon Prime Videoで観る Yahoo!ショッピングで買う

小説 母性

累計発行部数120万部を突破した、湊かなえさんのベストセラー小説です。
湊かなえさんの小説で度々使われる、信用できない語り手、や叙述トリックなど、巧妙なミステリーの手法が満載。
冒頭から終始、不気味な空気感が漂いますが、結末はそれを超えるイヤな展開が待ち受けています。
映画ではカットされている描写も多いので、作品の考察をしたいなら原作も読むのがおすすめです。

この作品のおすすめポイント

映画とは一味違う陰湿な空気感に浸れる、湊かなえのイヤミス小説

発売日2015年6月26日
出版社新潮社
著者湊かなえ
楽天で買う Amazonで買う1,105円 Kindleで読む624円 Yahoo!ショッピングで買う

まとめ

今回は映画『母性』のあらすじ紹介やネタバレ解説を行いました。
『母性』はミステリー初心者にとって少しハードルが高く感じられるかもしれませんが、トリックの正体を知れば難なく読み解けます。
『母性』は、親のあり方について観る人に考えさせられる傑作映画です。
イヤミスやミステリー好きでなくても、観た後に心に刺さるものがそれぞれあるはずです。
ぜひこの記事を参考に、あなたなりの見方で『母性』を考察してみてください。

※本記事では送料を想定しない価格で商品を選定しています。
※各商品の説明文は各ECサイトを参考に作成しています。
※商品は掲載時点の情報を参考にしています。最新の情報は各ECサイトをご参照ください

目次