映画『愛がなんだ』を考察! あらすじやラストシーンの象についても解説
小規模映画ながら口コミで評判が広がり、連日立ち見が出るほどの大ヒットを記録した『愛がなんだ』。
共感できる人とできない人にはっきり分かれる恋愛映画だといえるでしょう。
特にラストの象のシーンには、衝撃を受けた人も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな『愛がなんだ』のあらすじや魅力に迫り、物語を考察していきます。
この記事を読んでからもう一度映画を観れば、また違った楽しみ方ができるかもしれません。
この記事は『愛がなんだ』のネタバレを含みます。
作品の結末に関するヒントを知りたくない人は注意してください。
『愛がなんだ』のあらすじ
『愛がなんだ』は、角田光代による小説を映画化した作品です。
まずはあらすじを紹介します。
マモルに一目惚れした日から、マモル中心の生活を送っている28歳OLのテルコ。
どんな時でもマモルに呼ばれればすぐに駆けつけて世話を焼きます。
しかし、マモルはテルコに関心がなく、すみれという別の女性に恋心を抱いていたのでした。
それぞれの片思いはどのような結末を迎えるのでしょうか?
愛とは何なのか、考えずにはいられない作品です。
注目の監督! 今泉力哉監督
『愛がなんだ』を監督したのは今泉力哉監督。
今泉力哉監督は、恋愛映画を手掛けることが多く、さまざまな形の恋愛を描いてきました。
人の心の繊細な揺れ動きを表現する能力に長けていて、『愛がなんだ』でも切ない片思いを絶妙なバランスで表現しています。
『愛がなんだ』の魅力
『愛がなんだ』は、なぜこんなにも沢山の人から共感を得ることができたのでしょうか。
その秘密は、「一方通行の恋」にあります。
両思いになってハッピーエンドを迎えるあらすじの作品とは違い、『愛がなんだ』では皆が片思いをしているため、現実味があるのが特徴です。
テルコはマモルを、マモルはすみれを、仲原は葉子を好きになり、その想いは叶いません。
皆が一方通行の恋心を抱き、無意識に傷付け合う様子はかっこ悪くて切なくて、なぜか魅力的にも見えます。
だからこそ、恋愛に悩む多くの人の共感を呼んだのでしょう。
『愛がなんだ』の登場人物
『愛がなんだ』で作中に出てくる魅力的な登場人物たちを紹介します。
「なぜ共感を呼んだのか?」という疑問に対するもう1つの答えが、登場人物たちの魅力的なキャラクターの中にあります。
テルコ (岸井ゆきの)
28歳のOLで、恋愛に夢中になりがちな性格。
彼氏に依存しすぎてしまった結果、過去の恋人には浮気をされた経験もあります。
マモルに一目惚れをしてからはマモル中心の生活を送り、そのせいで勤めていた会社も解雇されることに。
気を遣いすぎて逆に敬遠されてしまう一面もあり、心を許せる友人はなかなかできません。
マモル (成田凌)
猫背でひょろりと痩せた体型が印象的な、出版社に勤める27歳。
恋心を抱くすみれに対しては尽くす反面、テルコに対しては無意識に甘えており、冷たく雑に扱っています。
いわゆるダメ男ですが、なぜか憎めない愛らしさがあるのが魅力。
「象の飼育員になろう」と急に言い出すような、掴みどころのない不思議な一面もあります。
葉子 (深川麻衣)
テルコとは10年以上の付き合いになる、テルコの数少ない友人です。
冷たく見えますが、テルコのことを想っている優しい一面も。
そのルックスから男性の影は後を絶たず、自分に恋心を抱いている仲原のことも都合よく利用してしまっています。
仲原 (若葉竜也)
葉子に思いを寄せ続けている青年です。
どんなに悲しくても葉子の元には笑って駆けつけるその姿に、多くの視聴者が心を動かされたことでしょう。
マモルに執着するテルコとは違い、仲原は葉子を諦める決意をしますが、その決断も人間らしく、視聴者の共感を呼びます。優しさの中に弱さを隠し持つ魅力的なキャラクターです。
すみれ (江口のりこ)
サバサバした飾らない性格で、お酒とタバコの似合う姉御肌の女性です。
マモルはすみれに恋心を抱いていますが、まったく相手にしていません。
気を遣わない性格で友達も多く、テルコとは正反対。
間違っていると思ったことは間違っていると相手に伝える潔さも魅力的です。
共感できるかどうかで意見は分かれる?
『愛がなんだ』は、登場人物たちの心情に共感できるかどうかで意見が分かれる作品です。
誰かに叶わない恋心を抱いた経験がある人なら、テルコや仲原に痛いほど共感し、物語が心に突き刺さってくるでしょう。
一方で、叶わない恋を経験したことがない人には、テルコや仲原の執着が狂気的にも見えてしまうかもしれません。
【アンケート調査】『愛がなんだ』の好きなキャラやシーンは?
ブックスコレクション編集部は邦画が好きな人にアンケートを実施し、『愛がなんだ』の好きなキャラクターや好きなシーンなどを尋ねました。
調査の結果、好きな登場人物の1位は主人公の山田テルコ、2位は葉子、3位は田中マモルとなりました。
キャラクター名 | 好きな理由や魅力 |
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山田テルコ | 「自分の気持ちに素直で純粋に相手を思う健気なところが良いなと思った」 |
「いい歳してここまで全力なのが羨ましいとも思ってしまうから」 | |
「共感できるから」 | |
葉子 | 「サバサバ冷たく思えるが、ダメなテルコの唯一の親友であるところ」 |
「テルコの良くないところはっきり言えるところがいい。また母子家庭の現実も知れてよかった」 | |
田中マモル | 「だらしなさと話し方がカッコよくて、惹かれる」 |
「クールな感じが素敵」 |
続いて、『愛がなんだ』の好きなシーンや、映画の魅力についてもうかがいました。
好きなシーン |
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都合がよくも幸せそうなテルコがいるシーン |
「幸せになりたいっスねぇ」のセリフが出るシーン |
お風呂でシャンプーしながら遊ぶシーン |
ナカハラの個展に葉子が現れるシーン |
料理をしているシーンで田中マモルがケチャップを手に出し、山田テルコの口に入れるシーン |
『愛がなんだ』の魅力 |
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好きで好きで仕方なくて、それが伝わらなくても諦められなくて、そういう気持ちがつき抜きた映画 |
恋愛依存症の人を理解できない人にもこうなっていくという教科書。また、恋愛をキラキラしたものだと勘違いしてる人に正しくわかるところも魅力 |
人間のだらしないところがいっぱい詰まっているところ |
派手な展開がなく、リアルな男女の恋愛を見ている感じが良い |
皆、手に入れたい人が中々手に入らない所や、女の人だからこそ分かる感情とエモさがあるのが魅力 |
・調査対象:邦画好きな人23名
・調査期間:2023年7月
・調査方法:インターネットによる対象者へのアンケート
・調査機関:ブックスコレクション編集部
『愛がなんだ』の注目シーン
『愛がなんだ』の注目シーンについて考察し、見どころを解説します。
登場人物たちの人間味が溢れていて魅力的なシーンを厳選しました。
電話が来て「ちょうど今から会社出るところ」と言うテルコ
マモルから電話があれば、とっくに帰宅しているのに、会いたいがために「ちょうど会社を出るところだ」と嘘をつくテルコ。
まさに都合のいい女です。
他にも、鼻歌を歌いながらマモルの部屋を掃除していたら冷たく追い出されたり、仕事があるのにマモルとのデートを優先したりと、テルコの生活はマモル一色。
恋愛体質の女性には、共感できる部分が多いのではないでしょうか。
追いケチャップは成田凌のアドリブシーン
飲み会のあとの夜を一緒に過ごしてから、半同棲気味になっていくテルコとマモル。
まるでカップルのように見えるキュンキュンシーンの中でも一押しなのが「追いケチャップ」です。
料理を作るテルコを後ろから抱きしめるように追いケチャップをするシーンは、実は台本にはない成田凌さんのアドリブ。
テルコの嬉しそうな照れた顔も必見です。
マモちゃんの好きな人はガサツな女性
連絡が取れなくなったマモルから再び連絡が来て、喜ぶテルコ。
しかし、呼ばれた先でマモルの隣に座っていたのは、すみれという女性でした。
ガサツでお酒とタバコが似合う大人な女性で、テルコとは正反対のすみれ。
マモルの態度からすみれへの好意を感じ取ったテルコは、なぜ自分は選ばれないのかと、再び悩みの渦へと落ちていきます。
別荘での険悪シーン
別荘での夜、線香花火をしていた4人。
話題は仲原の恋愛事情になります。
すみれが葉子のことを「仲原を振り回す最低な女だ」と言うと、一気に険悪なムードに。
静かに言い返す仲原でしたが、このすみれの一言がきっかけで、仲原は葉子を諦める決意をします。
おかしいことはおかしいとはっきり口に出すすみれの潔さが、仲原に一歩踏み出すきっかけを与えたのでした。
コンビニで感情をぶつけあう仲原とテルコ
仲原は「葉子のために、葉子への気持ちを諦める」と言います。
そこに「手に入りそうもないから諦めるんでしょ!」とテルコは反論。
2人が感情をぶつけ合うシーンは心が痛くなります。
「幸せになりたいっすねぇ」という仲原の言葉は、傷付いた心の叫びのようにも見えました。
この後、テルコが葉子を批判しに行くという原作にはないシーンが加えられています。
【ラスト考察】なぜテルコは象の飼育員に?
なぜ? という疑問が残る、ラストの象のシーンについて考察します。
テルコは、「象の飼育員になる」というマモルの夢を叶えました。
それは同時に、「マモちゃんになりたい」という自分の夢も叶えたことになります。
誰かに強く求められる人間になりたいという気持ちが、この行動を起こさせたのでしょう。
また、今泉監督は、象のシーンには「群盲、象を評す」の意味があると語っています。
「群盲、象を評す」とは物事の一部しか理解できないことのたとえです。
皆が持つ愛の形は異なり、完全に理解し合うことはできません。
ラストシーンで、人はすれ違ったりぶつかったりするのだということを伝えているのでしょう。
『愛がなんだ』をもっと味わおう
『愛がなんだ』は、小説と映画の両方で楽しめます。
映画を観て考察をしてから小説を読めば、より作品を深く味わえるでしょう。
愛がなんだ
公開日 | 2019年4月19日 |
監督 | 今泉力哉 |
出演 | 岸井ゆきの、成田凌、深川麻衣 |
本ページの情報は2023年6月時点のものです。
最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。
愛がなんだ (小説)
発売日 | 2006年2月25日 |
出版社 | KADOKAWA |
著者 | 角田光代 |
まとめ
『愛がなんだ』のあらすじや魅力に迫り、印象的なシーンやラストシーンを考察しました。
いかがだったでしょうか。
誰か1人、共感できる登場人物を選んでからもう1度観ると、より身近なストーリーに感じられて、心に突き刺さる作品になるでしょう。
ラストの象のシーンも、また違った解釈や考察ができるようになるかもしれません。
片思いを描いた映画が観たいという人は、ぜひあらすじをチェックして『愛がなんだ』を視聴してみてください。
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