『さよなら絵梨』を考察! 映画の内容やラストへの伏線、最後の爆発も解説
『さよなら絵梨』は、漫画『チェンソーマン』の作者・藤本タツキの読み切り漫画です。
2022年4月に漫画アプリ「少年ジャンプ+」に掲載され、7月には単行本化されました。
200ページ越えの完全新作として公開時には大きな話題となった一方で、その評価には賛否両論がある模様。
そこで今回は藤本タツキ著『さよなら絵梨』の内容をネタバレありで考察するとともに、ラストへの伏線や最後の爆発シーンを解説します。
この記事は『さよなら絵梨』のネタバレを含みます。
作品の結末に関するヒントを知りたくない人は注意してください。
藤本タツキ『さよなら絵梨』あらすじを解説【ネタバレあり】
賛否両論の感想が寄せられた藤本タツキ著の『さよなら絵梨』とは、一体どのような作品なのでしょうか。
内容を考察する前に『さよなら絵梨』のあらすじを順を追って解説します。
なお最後にネタバレを含むので注意してください。
母が死ぬまでを記録し映画化&学校で上映
主人公の伊藤優太は、誕生日にスマートフォンを買ってもらいます。
そんな彼に、病気で余命わずかの母親は「自分の動画を撮ってほしい」と頼みました。
残された家族がいつでも自分のことを思い出せるように、という願いに応え、母親の姿を記録し続ける優太。
そして、撮影した動画を映画化して学校で上映します。
映画のラストでは、母親が死ぬ場面を撮影できずに病院から逃げ出した優太の背中越しに、最後の爆発が起こるのでした。
優太は絵梨と出会い映画を作ることに
優太は、教師や生徒から母親の記録映画を「クソ映画」と酷評されてしまい、自殺を考えます。
そんな時に出会ったのが、謎の少女・絵梨でした。
互いに面識はなかったものの、絵梨は優太と同じ学校の制服を着ていて、優太の映画も観て「面白かった」と言います。
さらに絵梨は、優太に対して映画制作のリベンジを提案してきました。
こうして優太は、文化祭に向けて絵梨と一緒に、観客を泣かせる映画を作ることになります。
母親の裏の顔が明らかに
今度の映画では絵梨が主人公で、病気になった吸血鬼の日常を撮影するという設定です。
しかし、映画の制作中に、絵梨が本当に病気だと判明。
ショックを受ける優太は、父親から母親の最期の動画を見せられます。
そこには、息子を罵る母親の姿が映っていました。
もともと母親は自分のキャリアに役立てるために優太に動画撮影を頼んだのですが、優太の映画は母親のきれいな一面だけを思い出せるように編集されていたのです。
感動の映画が完成
絵梨との思い出を残すために、映画の撮影続行を決めた優太。
絵梨は病気で亡くなりますが、2人の映画は無事に完成し、文化祭で公開されます。
前回とは異なり、映画を観て涙する観客たちに、優太は絵梨との「みんなをブチ泣かす」という約束を果たせたのでした。
また、優太は絵梨の友人から、自己中心的で嫌な性格だった絵梨をきれいな思い出にしてくれてありがとう、と言われます。
大人になった優太は事故で妻と娘を失う
大人になった優太は就職、結婚と穏やかな人生を送り、やがて娘も生まれます。
一方で、絵梨の映画には何かが足りないと感じており、1人で編集を続けていました。
そんななか、優太は交通事故によって突然妻と娘を失ってしまいます。
辛い現実に耐え切れなくなり、優太は自殺を決意。
かつて絵梨と共に過ごした、思い出の場所へと向かいます。
絵梨と再会。ラストは爆発オチ
懐かしい場所で優太を待ち受けていたのは、亡くなったはずの絵梨でした。
昔と全く変わらない姿で、自分は本当に吸血鬼だったと話す絵梨。
そして、優太が作った映画には「ファンタジーがひとつまみ足りないのではないか」と指摘しました。
自分にとってファンタジーとは何なのか、ようやく気付いた優太は、絵梨に別れを告げます。
その背後で、母親の映画におけるラストと同じように、思い出の建物が爆発するのでした。
【考察】『さよなら絵梨』 複雑なストーリーの謎を紐解いて解説
『さよなら絵梨』は複雑なストーリー構成となっていて、どこまでが現実なのか、感想が分かれる作品です。
ここからは、張り巡らされた伏線や最後の爆発シーンの意味などをネタバレありでひとつずつ解説します。
<考察1> どこまでが現実? 感想は人それぞれ?
『さよなら絵梨』の感想が人によって異なるのは、作中において、現実と虚構の境目が曖昧になっているからです。
例えば、優太の母親が亡くなったことや、母親の動画で映画を作ったことは現実。
一方で、絵梨の見た目や性格が友人の証言と違うという伏線から、優太が絵梨と交流を深めていくエピソードは創作だとも考えられます。
はっきりした正解はないものの、最初から最後まで優太が作った映画と捉えることもできるでしょう。
<考察2> 絵梨は人間か吸血鬼か
病気で亡くなった絵梨は終盤に再登場し、自分が吸血鬼だと語りますが、はたして本当なのでしょうか。
結論として、絵梨を本当の吸血鬼だと考える感想が多いようです。
優太は映画にファンタジーをひとつまみ入れる傾向があり、かつて絵梨を撮影した映画では、吸血鬼の設定がファンタジーに該当していました。
しかし、その設定が真実だったからこそ、ラストを爆発オチにして、足りないファンタジー要素を補ったと解説できます。
<考察3> 最後の爆発の意味とは?
『さよなら絵梨』のラストは、母親の映画と同様に爆発シーンで締めくくられます。
最後の爆発には、どのような意味があるのでしょうか。
これは、絵梨が吸血鬼だったと明かされ、優太の映画からファンタジーがなくなってしまったために取り入れられたシーンだと考えられます。
絵梨や優太の父親の台詞で繰り返される「ひとつまみのファンタジー」が伏線となり、爆発こそが優太にとって必要不可欠なファンタジーだといえるのです。
<考察4>【さよなら絵梨】は映画のオマージュ?
『さよなら絵梨』は、『ぼくのエリ 200歳の少女』という映画のオマージュと考えられます。
どちらも吸血鬼のヒロイン「エリ」が登場するところが共通点。
孤独を抱える少年と少女が出会い、心を通わせるストーリー展開も似ています。
このほか、作中には映画にまつわるネタや名言が盛り込まれていて、作者・藤本タツキの映画好きぶりが伝わってきます。
元ネタの映画を観れば、『さよなら絵梨』をより楽しめるでしょう。
さよなら絵梨
優太は病気の母が亡くなるまでを動画で撮影し、映画化しました。
しかしその映画を酷評され、自殺しようとしたときに謎の少女・絵梨と出会います。
2人は観客を泣かせる映画を作り始めますが、絵梨にはある秘密があったのです。
学生の青春ストーリーかと思いきや、現実と創作が交錯するうえにいくつも伏線が張られ、衝撃のラストを迎えます。
また、映画のオマージュや名言が取り入れられていて、映画好きの人にもおすすめです。
ストーリー構成や伏線が巧みで、映画好きの人と感想を話したくなる
発行日 | 2022年7月4日 |
出版社 | 集英社 |
著者 | 藤本タツキ |
まとめ
一風変わったボーイミーツガール物語、藤本タツキ著『さよなら絵梨』あらすじをネタバレありで解説しました。
破天荒な展開と、作中の伏線が最後の爆発というラストにつながる衝撃のオチで、読後は世間の感想やネタバレ解説を知りたくなるのも魅力的。
また、映画のオマージュとして作品のネタや名言が登場するところやメタ的なセリフが登場するところも面白いポイント。
興味を持った人はぜひ読んでみてください。
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