『羊たちの沈黙』を考察 蛾や羊の意味、なぜ名作と呼ばれているのかも解説

1991年公開の『羊たちの沈黙』は、アカデミー賞で主要5部門を獲得した快挙を持つ名作ホラーです。
映画好きでなくても、作品名やポスターを見聞きしたことがある人は多いのではないでしょうか?
今回は『羊たちの沈黙』のあらすじ紹介やネタバレ考察を行い、なぜ名作と言われるのかその理由を解説します。
作品に隠されたメタファーやあらすじ、なぜ名作と言われるのかネタバレありで知りたい人はぜひ参考にしてください。

この記事は『羊たちの沈黙』のネタバレを含みます。
作品の結末に関するヒントを知りたくない人は注意してください。

『羊たちの沈黙』のあらすじ

「若い女性を殺害し、皮を剥いで、遺体を川に捨てる」といった手口の、バッファロービル事件がアメリカ各地で発生。
捜査が難航する中、FBIは訓練生クラリス・スターリングに、レクター博士に協力を求めるよう任務を与えます。
レクター博士は元精神科医でありながら、自分の患者9人食べ殺した過去を持つ凶悪な殺人鬼。
レクター博士の助言を通じて、クラリスは事件の真相に迫ることはできるのでしょうか?

『羊たちの沈黙』の登場人物・キャスト

あらすじに続き、『羊たちの沈黙』に登場する主要キャラを解説。
登場人物のバックグラウンドを知ることで、作品の考察をしやすくなります。

クラリス・スターリング

ジョディ・フォスター演じるクラリス・スターリングは、『羊たちの沈黙』の主人公です。
彼女はFBI訓練生で、女性連続殺人事件の解決を目指して奔走します。
クラリスは幼少期に両親を亡くし、牧場を営む親戚に引き取られました。
そこで飼われていた子羊が悲鳴を挙げながら屠殺される光景を目撃しますが、その経験はその後クラリスのトラウマになってしまいます。

ハンニバル・レクター

ホプキンス演じるハンニバル・レクターは、元精神科医であり連続殺人犯。
カニバリズム(人肉食)という特異な犯行を行っていたため、「人食いハンニバル」という異名を持ちます。
彼は少年時代に経験した第二次世界大戦の混乱の中、妹を殺害され食料にされた過去があります。
それが、彼のサイコパスとしての人格を作るきっかけになりました。
この役柄で、ホプキンスはアカデミー賞の主演男優賞を受賞しています。

ジャック・クロフォード

スコット・グレン演じるジャック・クロフォードは、FBIの行動科学課の主任です。
彼はバッファロービル事件を追うために、クラリスに任務を与えました。
経験豊富で冷静沈着な指揮官でありながら、妻の病気に心を痛める一面も持っています。

バッファロー・ビル

テッド・レヴィン演じるバッファロービルは、バッファロービル事件の犯人です。
ビルの本名はジェイム・ガムですが、彼の残忍な手口から「バッファロービル」と呼ばれるように。
彼は若い女性を誘拐し、監禁してから殺害し、その皮膚を剥いで自分の「第二の皮膚」を作ろうとする異常な犯行を行っています。

『羊たちの沈黙』の考察・ネタバレ解説

作中の蛾やオルゴール、「服を大事に」の意味など、ネタバレ込みで『羊たちの沈黙』を解説。
考察すればするほど、『羊たちの沈黙』がなぜ名作と言われるのかその意味が分かってきます。

『羊たちの沈黙』のタイトルの意味

『羊たちの沈黙』のタイトルは、クラリスのトラウマに由来します。
彼女は幼少期を過ごした牧場で、悲鳴を挙げながら屠殺されていく子羊を目撃しましたが、救えなかったトラウマを抱えていました。
その後バッファロービル事件に携わることになったクラリスは、救えなかった羊たちを事件の被害者たちと重ね合わせ、次こそは救済しようします。
つまりタイトルの「羊」とは事件の被害者であり、「沈黙」とは羊が泣き止むこと=救済を意味します。

オルゴールの意味

事件の手がかりを探すため、クラリスが被害者宅を訪れ部屋を見回していると、オルゴールに目が留まります。
オルゴールの中には、犯人が撮影したと思われる裸の被害者女性を映した写真が入っていました。
犯人は犯行前から言葉巧みに女性に近づき、女性の身体を下見していたのでしょう。
BGMのオルゴールは、「羊」つまり被害者の泣き声を示しているのかもしれません。

犯人と関係する? 蛾の意味

バッファロービル事件の被害者たちの体内からは、蛾の繭が見つかりました。
クラリスがレクターにこの意味を聞くと、レクターは蛾は「変化」の象徴だと答えます。
犯人には女性への変身願望があり、「蛾」はその執着を意味していたのです。

写真の意味・役割

『羊たちの沈黙』における写真は、キャラクターの過去や心理描写を映す意味がありました。
また犯行現場の写真は、犯人の手がかりを追う上で重要な役割を果たしています。
写真は物語の緊張感を高め、キャラクター間の関係性を深める道具として機能しています。

「自分の服を大事にな」の意味

レクターは娘を誘拐されたマーティン上院議員に、「自分の服を大事にな」と言います。
ネタバレになりますが、これはレクターがマーティン上院議員に対して、犯人が人間の皮で服を作っていることを暗に示唆したものだと考察できます。
つまり「自分の服を大事にな」とは「皮膚を剥がれないよう気を付けて」という意味だったのでしょう。

ラストシーンのチルトン医師とレクター

ネタバレになりますが、ラストシーンでクラリスがレクターに事件解決の一報を入れると、レクターは「これから古い友人を夕食に」と言いました。
古い友人とは「チルトン医師」のことで、夕食にとは「食べる」という意味。
脱獄に成功したレクターは、かねてより怨恨を募らせていたチルトン医師を殺害し食べてしまったのです。

クラリス役がジョディ・フォスターである意味

撮影当初、ジョナサン・デミ監督は、クラリス役にジョディ・フォスターを起用することに対して後ろ向きでした。
もともと、クラリス役としてミシェル・ファイファーにオファーを出しましたが断られてしまいます。
その後、別の候補者の名前も挙がっていましたが、最終的にはジョディ・フォスターに決定。
ジョディ・フォスターは南部訛りを完璧に再現するなど演技力を見せつけ、この役でアカデミー主演女優賞を受賞しました。

『羊たちの沈黙』はなぜ名作と言われているのか

『羊たちの沈黙』はなぜ名作と言われているのでしょうか?
その最大の理由は、脚本力の高さにあると考察します。
犯人は「人間の皮を剥ぐ」という恐ろしい手口を持つ人物でありながら、捜査に協力するレスターもまた犯人以上のサイコパスという構図がとても面白いです。
またグロい描写に重きがおかれがちなサイコホラーですが、クラリスの成長や登場人物の心理描写が繊細に描かれていて、物語としての見ごたえもあります。

『羊たちの沈黙』のわからない部分

ここまで紹介したあらすじ、解説の通り、『羊たちの沈黙』には様々なメタファーが隠されていますが、わからない部分もあります。
例えばレクター博士の過去や事件を起こした動機については、作品中であまり触れられていません。
また犯人の動機についても、犯罪心理学への理解が少ない一般の人にとっては理解に苦しむところがあります。
『羊たちの沈黙』の続編「ハンニバル」シリーズでは、レクター博士の過去やその後にスポットを当てています。

『羊たちの沈黙』を見る・読む

ここまで『羊たちの沈黙』のあらすじ紹介やネタバレ解説をしましたが、なぜ名作と言われるかその理由が分かったと思います。
解説を踏まえて、もう一度『羊たちの沈黙』を鑑賞してみてはいかがでしょうか。

羊たちの沈黙

公開日	1991年6月22日
監督	ジョナサン・デミ
出演	ジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンス、スコット・グレン

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羊たちの沈黙 上下合本版 電子書籍版

発売日	2021年7月22日
出版社	新潮社
著者	トマス・ハリス

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まとめ

今回は『羊たちの沈黙』のあらすじや考察、なぜ名作と言われるのかについてネタバレ解説しました。
『羊たちの沈黙』がなぜ名作と評価されているのかと言えば、あらすじに加え、クラリスとレスターの心理戦の秀逸さも大きな理由でしょう。
『羊たちの沈黙』のその後が気になる人は、続編の『ハンニバル』もぜひ視聴してみてください。

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